第3話 脅し義妹

「お前、何処に行ってたんだ〜?義妹と一緒によ〜」


クラスに戻ると、言葉を皮切りに教室の全員が俺を見つめてくる。

全員が椅子に腰掛けて目を丸くして俺に注目している。

特に悠平が全員の代表な感じで俺に対してニタニタして怪しい笑みを浮かべていた。

まぁ、その何だ悠平、残念だが。

期待するものは何も無い。


「.....ハァ.....」


「.....何で青ざめてんだ?.....あ」


マジで散々怖い事があったからな。

全くいい感じでは無かったぞ、とだけ言っておこう。

俺はその様に思いながら、目の前を見ると。

うん?って言うか、なんでこんなきっちりみんな腰掛けて.....あ。


「ホームルームを学校に来ているのに遅刻とはいい度胸だな。山本ォ?」


気が付いて目の前を見る。

眉を顰めて、出席簿で肩を叩いている担任が立っていた。

俺はその担任に更に青ざめながら、ぐ、グッドモーニング、だけ言ってみたのだが。

脳天に出席簿の角が思いっきりに直撃した。



「で、結局、何が有ったんだよ?」


「クソッタレが馬場の奴。めちゃ痛い.....って、ああ、何も無いぞ。義妹が俺のやった事を説教しただけだわ。マジで朝っぱらから最悪の気分だ」


俺はその様に思いながら真紅の手帳を破り捨ててやろうかと思ったが。

取り敢えず、それは止めておこうと思って1時限目の終わり、英語の休み時間に悠平と話していると、ガラッと再び教室のドアが勢い良く開いた。

そして、眉を顰めた一歩がブスッと俺を睨んでくる。

約束のブツを取りに来たから、来い。

そんな感じで、だ。

俺は盛大にため息を吐いた。


「.....すまん。悠平。ちょっと逝って来るわ」


「うむ、逝ってくるか。気を付けてな。無事に帰って来い」


全くなんでこんな目に。

俺はその様に悠平に話して鞄を持ってから一歩の後ろを付いて行く。

廊下に出てから途中で意を決して一歩に対して聞いてみた。


「.....お前、あのさ、俺の事が好きなの?」


「.....」


俺もちょっと恥ずかしいので意を決したのだが。

反応は無しだ。

俺は盛大にクソッと悪態を吐いて、そして窓の外を見る。

その瞬間、勢い良くドンッと何かに打つかった。

一歩の背中に。

あ?


「違うから」


「.....あ?」


「私はおに.....和幸なんかどうも思ってないんだからね!!勘違いしない!!」


人気の無い場所でその様に俺に打つかってくる、一歩。

赤面で怒涛の剣幕で、俺に顔を近づけてくる。

顔を引き攣らせながら、俺は、お、おう、と反応した。

一歩ちゃん怖い。


「あのさ、でも.....お前、あの手帳は流石に.....」


「ハァ!?あれは私が好きな絵の人物の事を書いた手帳!!あれはシナリオ!!おに.....和幸の事な訳、にゃい!!」


主語と述語が滅茶苦茶だぞ。

噛んだぞ。

でも確かに一歩は暇つぶしに絵が得意だから趣味で2次元男子の絵は描いているな。

でも、流石にその言い訳は苦しいかと思いますが。って言うかさっきからその、おに、って何やねん。

俺は面倒だなぁと思いつつ居ると。

一歩がチェック柄のスカートに拳を置いて右手で促してきた。


「とにかく!早く手帳返して!」


「は、はい」


俺は直ぐに鞄の中から手帳を取り出して、渡す。

それから直ぐに一歩はフンッと言って去って行った。

何だよアイツ。

お礼も無しかよ。

もどかしさも残るしよ。


「でも、まぁ良いか。これで解決と言う事で」


俺はその様にフッと思いつつ。

俺は廊下を歩いて教室に帰る。

早くしないと2時限目が始まる。



クラスのドアを開ける。

そして、教室に帰って来ると悠平が見てきた。

俺はその悠平を見ながら安心した様な顔付きをする。

これに対して苦笑する、悠平。

それから話してきた。


「生きて却って来たか」


「そうだな。もう義妹が俺に関わる事は無いと思う。取り敢えずは一安心だ」


「そうか。でもさ、お前が狙わないんなら俺が義妹ちゃんをマジで狙おうかなぁ。猛烈なこの学校随一の美少女だからよ」


「おう。もう早く結婚してくれ。ご祝義は1円だけ包んでやるよ。お祝いに」


何だよそれ、ヒデェな。

その様に言いながら笑う悠平。

いや、でも貰ってくれるなら嬉しいよあんな怖い奴と俺はその様に思いながら、スマホを見ると、画面上にメッセージが届いている。

あ?メッセージ?母さんか?

俺は直ぐに開く。


(その.....和幸。手帳.....どのくらい見た?)


え?何だこれは?

一歩からのメッセージ?

俺は眉を顰めて直ぐにメッセージを送ってみる。

なんだコイツ、まだ何か用なのか?


(いや、左右、2ページだけなんだけど。それがどうかしたのか)


(うん、そう。分かった)


いやいや、何が分かったんだ。

俺はその様に思いながらクエスチョンマークを浮かべる。

すると、次のメッセージが送られてきた。


「おい?和。何やってんだ?」


「いや、母さんからのメッセージだ」


その様にして俺は答える。

また直ぐに来たメッセージを読んでみる。

そこには、こう書かれていた。


(大切な手帳の中身を見た罰として、私の放課後の買い物に付き合って)


(いや、何でそれだけでお前の買い物に付き合わなくちゃいけない。だいたいお前、それは漫画のキャラクターだの話していたじゃねーか。あれは嘘か?)


(ふーん。良いよ?だったらベッド下にとってもえっちなエロ本がある事をお義父さんにぜーんぶ話すから)


いや、俺が殺される。

巫山戯んなよマジでよ。

その様に思いながら、俺は首を傾げている悠平を尻目で見つつ溜息を吐いた。

そしてメッセージを送る。


(これっきりだからな)


(何言ってんの?乙女の心を覗いた罰はこれぐらいじゃ済まないよ?付き合え♡)


(ちょ、え?)


俺はまさかの事に眉を顰めた。

いやいや、いつ迄続ける気だこのバカ。

俺はその様に思いながら、頭に手を添えた。

この先まだ続くのかよ。

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