第2話 突撃、隣の和幸
真紅の手帳。
ある意味、少し不気味さが増しているが、内容はそうで無い。
と言うか、一体、誰が落としたんだ。
義妹は有り得ないとするとほぼボッチの俺に女の子の知り合いは居ない。
つまり、簡単に言えば、誰が書いたか分からない。
その様に考えながら辿り着いた、県立の高校。
この学校には一歩は一緒に通っている。
無論だが俺がキモオタという事で一緒に通う機会は全く無い。
そんな義妹に罵られる日々を過ごしていた。
ある意味、ため息しか出ないのだが。
今日は違う。
「.....」
クラスの2年教室にて。
鞄の中に入っている、謎の赤い手帳に対して俺は顎に手を添えて考えていた。
やっぱり一歩なのだろうか落とした奴は。
いや、でも。
うーん?
「おーい。和。スマホの新作ゲームの話しようぜ。あれ面白いよな?」
「.....あ?ああ良いぞ。お前もダウンロードしたのか?」
「もちよ」
俺達はニヤニヤする。
新作のスマホの美少女ゲーム、(愛しき貴方の為に)。
俺達は事前予約までして、そのゲームを待ち侘びていた。
美少女の大きな胸がたゆんたゆんと動くのが良い。
小さな胸の少女も居て、しかも画面アニメーションをVRを最高峰に使って下さっている最強レベルのゲーム。
恐らく、今期のゲームの東西南北の覇権を完全に握っている。
ぐふふなゲームだ。
「.....あれが良いよな?」
「あれだな、うむうむ」
「勿論.....あそこも.....」
「うむ」
クラスの女子は俺達を見ながら、怪しんで青ざめながらヒソヒソ話をしている。
それはそうだろうな。
一応、俺達の素性はクラスにバレつつ有るので。
俺は居場所が無くなる危機感を感じながらもこの会話が楽しいのでこのままの日常を過ごしていた。
それで、もう直ぐホームルームが始まろうとした時だ。
ガラッ!!!
「.....?!!」
突然、この教室のドアが勢い良くバァンと音を立てて開いた。
教室中が教室のドア、その一点に注目する。
うん?ってか、え!?
「何.....おま.....」
「ちょっと来て」
いや、ちょ、まさかの事態だ。
いきなり現れた一歩に首元のネクタイを思いっきり引っ張られながら。
俺は教室を後にした。
突然の美少女襲来に教室は唖然として固まる。
特に悠平が、だ。
どうでも良いがな。
☆
「ちょっと待てコラ!一歩!何のつもりだ!」
「.....」
引き摺られながら行った場所は屋上だった。
ってか、ネクタイが締まって息が詰まるかと思ったわ!
俺は目の前に立っている、一歩を見ると。
赤面で思いっきり震えていた。
俺を睨む。
「.....どうした?トイレがま.....」
「っ!?」
その、全部を言い終える前に思いっきりアッパーが飛んできた。
俺はゴハァッと後ろに思いっきり吹き飛ばされる。
なん、ちょ、顎がぁ!?
「イテェな!何すんだテメェ!?」
「.....アンタ.....私の手帳見なかった?」
「手帳って何だ.....あ」
「っっ!!?」
赤面を通り越して今にも泣きそうな、一歩は目が逆三角形をしている。
これはマズイ、マジで殺されるかも知れない。
俺は青ざめながら一歩を見る。
「えと.....その、な.....中身を見た?」
「.....」
一歩に俺は冷や汗を流す。
何つうか、うん。
物凄い鬼の形相に俺は柵際まで追いやられた。
俺は冷や汗を流しながら、そんな一歩にジェスチャーをしつつ答える。
今まで見た事ない様な一歩に、だ。
「答えて!中身を見たのかって聞いてんの!!」
「いや、まぁ、確認の為に.....ちょっとだけ.....」
「〜〜〜〜〜っ!!?」
超を超えた。
赤面の赤面の赤面を通り越した赤面で。
俺を涙目で見ながら首を振った。
「えっとえっと.....アンタなんか好きな訳じゃにゃいからかんちらいしないれ!!」
一歩は思いっきり顎に手を添えて痛がった。
いや、すげぇ噛んだぞ、おい。
って言うか、あの手帳やっぱりコイツのだったの!?嘘だろう!?
俺は驚愕しながら、俺も赤くなっていく。
「お願い.....返して.....」
ギリギリ言葉を吐き出す一歩。
まるでキスでもした直後の様に涙で目を潤ませている一歩。
赤面する俺。
いや、どうした、俺。
今までこの野郎、と言うか義妹にこんな感情は無かった筈だ!
落ち着け、俺。
落ち着くんだ、和幸。
良いか、義妹にこの感情は有り得ない!
「いや、ちょ、返すから!落ち着け!」
「.....うん」
本当に力尽きて弱々しく、言葉を発する一歩。
俺はそれを見てから真面目に可哀想に思い直ぐに取りに行こうとした、のだが。
始業のチャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコーン
「くぅ!.....戻らなきゃ!.....あ、おに.....じゃない。和幸」
「は、はい」
「手帳の中身をまた見たら.....土に埋めるからね」
「あ、はい」
いや、土に埋めるって。
落としたのコイツだろう、と思っても。
夜叉の様な笑みの一歩に、言葉が出なかった。
飲み込んでしまって、だ。
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