第5話田舎っぺ
めちゃくちゃ探しまくったのに、一つも宿が見つからないとか田舎半端ないな。冒険者とかここら辺に来ないのかな。確かにモンスターが湧くとは到底思えない。ここから見える景色はハンガリー盆地の平原地帯の先にアルプス山脈があるかのような風景だ。フン族とかマジャール人みたいなのが侵入しそうで怖いんですけど。かと言ってハンニバルやナポレオンも山を越えてくるなよ。
どうでもいい事はここまでにして、本題に戻ろう。宿がないなら最悪野宿だな...でも、ユナは一応女の子だしそこら辺も考えてあげなきゃか。
「どうするよ、ユナ」
ユナはゆっくりとこちらを見て、首をかしげた。
「何を?」
ユナは頭の上にはハテナが浮かんでいるような、間抜けな顔をしていた。
「いや、宿の事なんだけど...」
「まずはソンチョーに話を聞きに行くのが正解だったんじゃないかな」
あ、そうか。なんで思いつかなかったのだろうか。見つからないなら、現地の人に聞けばいいのだ。
「じゃあ村長に会いに行くか」
「うん!でも誰がソンチョーか分からないよ...」
「そこら辺の村人に聞けばいいと俺は思うぞ」
「亮一君、任せたっ!」
えぇ...人任せかよ。第一人に声をかけるのが苦手なんだよな。コミュ力高いリア充は全員爆ぜればいいと思うの。
「亮一君〜あそこにいる人とかいいんじゃない?」
「あ、ああ。分かったよ、ちょっと聞いてくる」
俺は勇気を振り絞って、膨よかなオバさんに話しかけてみた。
「あ、あの...すいません。旅の者なんですけど、村長ってどこにいらっしゃるか分かりますか」
緊張していたのか、訳が分からない敬語を使ってしまった。いや〜ユナが離れたところから見ているだけで良かった。近くにいたら絶対笑われてた。
「なんだい?見ない顔だね。わたしゃ耳が遠いからねぇ...大きな声で言ってくれるかのぉ...」
「あのですね!自分!旅の者でして!村長と!話が!したいのですが!何処にいるか!分かりますか!?」
「ウルドの事かい?」
ウルドとは村長の事だろうか。
「はい!ウルドさんと!話が!したいです!」
「ちょっと待ってな...今呼んでくるからなぁ...」
※
「ユナ、取り敢えず村長のウルド?ってやつを呼んでもらえるらしいからこっちに来いよ」
そう声をかけると嬉しそうにこちらに駆けてきた。何...なんかいいことでもあったの?
「...どうしたんだ?」
「いや〜?何でも無いよ〜?亮一君の敬語が可笑しかったなんて思ってもないよ〜?」
ユナはクスクスっと笑った。コイツ...絶対に許さないぞ...何かあったら助けてやんないんだからねっ!
しばらくすると、村長のウルドらしき人がこちらに手を振りながらやって来た。筋肉隆々、金髪白人、青眼だった。身長は180くらいだろうか。俺よりもちょっとデカい。タンクトップ1枚だ
「いや、どうもどうも〜。この村の村長をやってるウルドだ。宜しくな!」
ウルドはにかっと笑って右手をこちらに出してきた。握手をすればいいのだろう。俺はその手を握った。コイツとは仲良くなれそうだ。
「俺の名はリョウイチ。リョウイチと呼んでくれ。」
「そうか、リョウイチ。じゃあ俺の事もウルドと呼んでくれ。今日は何の用だ?この村に客が来るなんて珍しいから驚いたぞ。」
「すまないな。実は洞窟で迷ってしまって適当に抜け出してやって来たのがここ、アグルコスなんだ。そこで今日はここの村で泊まっていこうかと思っていて、宿を探していたんだがなかなか見つからなくてな。そこで村長に聞けば分かると思ったんだが...」
「この村には宿はないんだ。普段客人も来ないしモンスターなんて以ての外だ。生まれてから今まで見たこともない。今日は俺の家に泊まっていくか?」
「本当か!お言葉に甘えて、そうさせて頂きます。」
「そこのお嬢ちゃんは連れか?」
ウルドはユナのことを指さして聞いた。
「私の名前はユナ。好きな呼び方で呼んでもらって構わないわ。」
ユナはえへんと得意そうに前に出た。
「リョウイチ、ユナ。俺の家でゆっくり休んでいってくれよな!」
「ありがとよ、兄弟」
俺はそう言ってウルドの後ろを歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます