第5話田舎っぺ

めちゃくちゃ探しまくったのに、一つも宿が見つからないとか田舎半端ないな。冒険者とかここら辺に来ないのかな。確かにモンスターが湧くとは到底思えない。ここから見える景色はハンガリー盆地の平原地帯の先にアルプス山脈があるかのような風景だ。フン族とかマジャール人みたいなのが侵入しそうで怖いんですけど。かと言ってハンニバルやナポレオンも山を越えてくるなよ。


どうでもいい事はここまでにして、本題に戻ろう。宿がないなら最悪野宿だな...でも、ユナは一応女の子だしそこら辺も考えてあげなきゃか。


「どうするよ、ユナ」


ユナはゆっくりとこちらを見て、首をかしげた。


「何を?」


ユナは頭の上にはハテナが浮かんでいるような、間抜けな顔をしていた。


「いや、宿の事なんだけど...」


「まずはソンチョーに話を聞きに行くのが正解だったんじゃないかな」


あ、そうか。なんで思いつかなかったのだろうか。見つからないなら、現地の人に聞けばいいのだ。


「じゃあ村長に会いに行くか」


「うん!でも誰がソンチョーか分からないよ...」


「そこら辺の村人に聞けばいいと俺は思うぞ」


「亮一君、任せたっ!」


えぇ...人任せかよ。第一人に声をかけるのが苦手なんだよな。コミュ力高いリア充は全員爆ぜればいいと思うの。


「亮一君〜あそこにいる人とかいいんじゃない?」


「あ、ああ。分かったよ、ちょっと聞いてくる」




俺は勇気を振り絞って、膨よかなオバさんに話しかけてみた。


「あ、あの...すいません。旅の者なんですけど、村長ってどこにいらっしゃるか分かりますか」


緊張していたのか、訳が分からない敬語を使ってしまった。いや〜ユナが離れたところから見ているだけで良かった。近くにいたら絶対笑われてた。


「なんだい?見ない顔だね。わたしゃ耳が遠いからねぇ...大きな声で言ってくれるかのぉ...」


「あのですね!自分!旅の者でして!村長と!話が!したいのですが!何処にいるか!分かりますか!?」


「ウルドの事かい?」


ウルドとは村長の事だろうか。


「はい!ウルドさんと!話が!したいです!」


「ちょっと待ってな...今呼んでくるからなぁ...」







「ユナ、取り敢えず村長のウルド?ってやつを呼んでもらえるらしいからこっちに来いよ」


そう声をかけると嬉しそうにこちらに駆けてきた。何...なんかいいことでもあったの?


「...どうしたんだ?」


「いや〜?何でも無いよ〜?亮一君の敬語が可笑しかったなんて思ってもないよ〜?」


ユナはクスクスっと笑った。コイツ...絶対に許さないぞ...何かあったら助けてやんないんだからねっ!




しばらくすると、村長のウルドらしき人がこちらに手を振りながらやって来た。筋肉隆々、金髪白人、青眼だった。身長は180くらいだろうか。俺よりもちょっとデカい。タンクトップ1枚だ


「いや、どうもどうも〜。この村の村長をやってるウルドだ。宜しくな!」


ウルドはにかっと笑って右手をこちらに出してきた。握手をすればいいのだろう。俺はその手を握った。コイツとは仲良くなれそうだ。


「俺の名はリョウイチ。リョウイチと呼んでくれ。」


「そうか、リョウイチ。じゃあ俺の事もウルドと呼んでくれ。今日は何の用だ?この村に客が来るなんて珍しいから驚いたぞ。」


「すまないな。実は洞窟で迷ってしまって適当に抜け出してやって来たのがここ、アグルコスなんだ。そこで今日はここの村で泊まっていこうかと思っていて、宿を探していたんだがなかなか見つからなくてな。そこで村長に聞けば分かると思ったんだが...」


「この村には宿はないんだ。普段客人も来ないしモンスターなんて以ての外だ。生まれてから今まで見たこともない。今日は俺の家に泊まっていくか?」


「本当か!お言葉に甘えて、そうさせて頂きます。」


「そこのお嬢ちゃんは連れか?」


ウルドはユナのことを指さして聞いた。


「私の名前はユナ。好きな呼び方で呼んでもらって構わないわ。」


ユナはえへんと得意そうに前に出た。


「リョウイチ、ユナ。俺の家でゆっくり休んでいってくれよな!」


「ありがとよ、兄弟」


俺はそう言ってウルドの後ろを歩き始めた。

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