紹介文から受ける最悪に近い第一印象と、そこから少しずつ離れていき気が付けば遥か遠い地点へと誘われてしまうギャップが見事でした。
正直いうとホラーに限らずマニアというものは多くの作品を知り過ぎてしまったが故に、生半可なシナリオでは満足の出来ない体質に「なってしまって」いるものです。つまりは冒頭を読んだだけで大体のオチが予想できてしまうストレートな作品にあまり魅力を感じなくなっているのですね。
ホラーといえども謎が解き明かされる爽快感や、工夫の凝らされたオチに酔いしれたいと思っているのです。そして出来ることなら美学や矜持のようなもの(例えそれが歪んだものであったとしても)が感じ取れると尚よいでしょう。まぁ、そこまでくると個人的な嗜好も含まれるかもしれませんが。
あえて下品に描くことで緩急をつけてギャップを生み出す。
この技法はいつか自分も使ってみたいと感じました。
恐らく主役の兄弟が最初から格好のいいキャラクターとして描かれていたら、まったく印象に残らない陳腐な作品だったのではないかと思います。つまり料理に用いられた食材は極めて平凡なもので、わざわざ遠くまで極上の素材を探しに行ったりしていないのです。
冷蔵庫に残っていたあり合わせのもので美味しい晩御飯をこしらえてしまう。それこそが熟練の料理人にしか出せない技量というものなのではないでしょうか?
魅力的なホラーを書きたい人なら是非とも知っておくべき創意工夫。知りたい方は是非一読を!