第9話~アンジェロ王国にて~

 弾丸をもろに食らってしまった俺は、そらが呼んでいるのに答えることが出来なかった。正直死ぬんだと思った。

 その瞬間、急に体が癒される感覚で俺は目が覚めた。気付くと、俺とそらは小さな結界に中にいて、今度はそらが倒れていた。きっとこの子に助けられたんだと悟った。

「そら…。」

「ワタル!!」

 小さな結界の外では、バドが戦ってる最中だった。加勢しに行こうとした時、不思議な声が聞こえた。

『その結界から出てはいけません。』

 その声に振り向くと、少し後ろにドレスを着た女の人が立っていた。ただ、どこかからの映像なのか、後ろの景色が透けて見えた。

「あなたは…?」

『後でお話しします。バド、結界の中へ…。』

「わかりました!!」

 そう言ってバドが中に入ってきた。何が起きているのか分からない俺の視界はだんだん青くなっていく。転送魔法だ。そう思った時には、俺たちはどこかのお城の中にいた。

「ここは…?」

「アンジェロ王国。」

「え!?」

 バドの一言に驚いた。どういうことだ?あの時、バドは呪文を唱えていない。そして、俺はアンジェロ王国の場所を知らないから、そもそも転送しようがない。じゃあ誰が…。

「さて、混乱してるとこ悪いけど、ここに連れてきてくれた方に挨拶に行こうぜ。」

「…っ!ここにいるのか?」

「ああ、まあな。そらのこと、ちゃんと抱えてやってくれ。かなり消耗してっから。」

 そう言われて腕の中にいるそらを見ると、顔色は悪いがスースーと寝息を立てていた。疲れたんだろうな…。

「ほら、行くぞ。」

「分かった。」

 そう言って俺はバドの後をついて言った。

 長い階段を上って、たどり着いたのは大きな扉の前。

「ここは玉座の間。いいか、中にいらっしゃる方に決して無礼がないようにしてくれ。」

「あ、ああ。…バドがそんなこと言うなんて珍しいな。」

「まあ、俺、その方に仕えてる身だからな…。」

 恥ずかしそうにバドはそう言った。誰かに、仕えていたんだな…。

「入ります!」

「どうぞ。」

 中から聞こえた声は、五艦で聞いた女の人の声だった。

「「失礼します。」」

「バド、任務ご苦労様。そして、ワタルさん、ですね。それに今は寝てるそらさんも。ようこそ、アンジェロ王国へ。」

 笑顔でそう言ったのは、やっぱり五艦で助けてくれた女の人だ。

「ワタル、こちらアンジェロ王国現王女様。俺の仕えてる人。」

「王女様…。」

「初めまして。」

 にっこり笑ってそう言う王女様に、俺はそらが落ちない程度に頭を下げた。

「初めまして…。それと、助けていただきありがとうございます。」

「いえいえ、それに、あなたを助けたのは、そらさんですから。」

「え?」

 そう言われてそらを見る。

「私は、そらさんが魔導を使うのを手伝っただけですから。」

「え?でも、そらは魔導を使ったことは…。」

「女王様は魔法を持つ人の潜在意識に語り掛けて、魔導を引き出すことが出来るんだ。」

 なんか言われてることが難しいけど…。

「本当は、魔法があるのに魔導が使えない人の後押しのために使うものなんだけど、緊急事態だったから…。後でそらさんに謝らないとね。」

 そう言われて思い出した。確か、MAEにも同じことができる人がいたな。その人と同じことが出来るのか…。でも、それの対象になった人って、確かかなり消耗してしばらく目を覚まさないんじゃ…。

「…そろそろ、お部屋の準備ができたかしら。お二人は同じ部屋になっちゃったけど、いいかしら?」

「あ、はい。大丈夫です。」

 そんなことを考え、そらのことが心配になっていると、女王様はそう言った。

「そ、主犯格の話もあるから、今日のところはもう寝ましょう。また明日、ゆっくり話しましょう、いいかしら?」

「はい。」

「バド、案内を。」

「承知いたしました。こっちだ。」

 そう言って、俺たちは玉座の間を後にした。


「なあ、主犯格って、もう分ってるのか?」

 部屋のついて、バドにそう聞く。バドは言いにくそうに首を縦に振った。

「それって、一体…。」

「今日はもう遅い。この話は長くなるから、明日話そう。」

「そっか…、分かった。じゃあ、また明日。」

「ああ、明日。」

 そう言ってバドは出て行った。あいにくベッドは一つしかなかったので、そらをベッドに寝かせて、俺はソファで寝ることにした。

「おやすみ、そら。」


 そして、次の日。俺は、人生で一番ショックなことを聞かされたんだ。

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