第15話~そらの想い~

 ワタルくんの怪我は、正直そこまで深くなかったから、回復の結界を使えた。でも、アスカさんたちは無理だった。あの怪我を回復しようとすると、ワタルくんに手が回らない。結局、私はワタルくんしか大事じゃないのかもしれない。その事実が、私を苦しめた。

「そら…フウさんたちを。」

「ごめん、今はワタルくんしか、出来ない…。」

 泣きながらそう言えば、ワタルくんは「俺は、大丈夫…。」と掠れた声で返ってくる。無理だよ。ワタルくんを放っておけない。結局私は自分の大切な人しか考えられないんだ。

 そんな時、隣から桜色の光が差し込む。見るとそこには大きな桜の木が。あれ?でもこれ、日本の桜じゃない。なに、これ?

「あれ?」

 ワタルくんがそう言うから見ると、傷が全部塞がってた。すごい…。回復魔法、なのかな?

「すごい、これサクラさんの魔法なの…?」

 そう言って呆然としてる。私もびっくりした。ワタルくんだけじゃなくて、アスカさんたちの傷も治ってく。しかも、あの人たちは目が眩んで、こっちを向けない。あの魔法、なんだろう?

 でも、それより。

「良かった…、ワタルくん…。」

 私は、ワタルくんの怪我が治ったことの方が嬉しかった。こんな時でも、周りを見る事が出来ないのが悔しかった。

「ありがとう、そら。」

「え?」

 突然そう言われてびっくりする。

「護ってくれて。」

 ワタルくんはそう言って、私を優しく包み込んでくれる。

「それに、回復もしてくれたでしょ?嬉しかった。心配かけて、ごめんね。」

 そう言ってもらえて、なんだか嬉しくて、涙が出て来る。戦闘中だけど、少しならいいのかな?

「良かった…。」

 もう一度そう言えば、ワタルくんはまた「ごめん」と言う。ワタルくんが謝ることじゃないのに。

「もう、大丈夫だから。」

 そう言ってもらえて、心の底から安心した。とにかく、無事で良かった…。

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