第14話~夢の続き~

 球体に乗って運ばれたのは王座の間だった。

「やあ、ようこそ、サクラ・フルール姫、ヒンメル・アンジェロ姫!」

 あの人は、そう言って出迎えてくれたけど、私は敵意丸出し、そらさんは完全に怯えきった状態だった。

「ここから出して下さい。」

「もう少し待ってくれたらね。」

 私が言っても機嫌がいいらしく、そう言われる。でも、この球体の中では弓は出せない。…何も、出来ない…。

「サクラさん…。」

 そらさんが涙声でそう言って私を見た。怖いよね。私も怖い。でも、彼女は巻き込まれた側の人間だもん。こんな事になって申し訳ない。

「ごめんね。本当はこんな事にならないようにって色々考えてたんだけど、上手くいかなくて…。」

「いえ、そんな!それより、ワタルくんたちが心配で…。」

「…うん。それは、私も心配。」

 そらさん、自分も危険な状況なのに、優しいな。

 それに、私も心配。あの夢と同じ状況になったら…。

「あの、サクラさんも、大丈夫ですか?」

「え?」

「顔色が悪いので…。」

 そういえば、入る時も同じ事言われたな。周りの人に気を使えるんだ。そんなところは、昔と同じなんだね。

「うん、ありがとう。優しいね。」

「いえ、そんな事ないです!!その、怖くて、他の事を考えようとしてて…。」

「そうだよね…。でも―」

 大丈夫。そう言おうとした時、扉が開いた。

「サクラ、お待たせ。」

「連れてきましたよ!」

 そう言ってベルゼブルとディーアブルが入って来る。そして、その脇に、フウくんたち全員が抱えられてた。

「ワタルくん!!!」

「みんな!!!」

 みんな、その場で落とされる。

 うそ、うそだよ。そんな、夢と同じ事になるなんて、そんな…。

「お帰り二人とも。さあ、出してあげるよ。」

 そう言ってあの人は球体を動かして、私たちを丁度みんなの真ん中辺りに私たちを降ろした。

「フウくん、アスカちゃん、カエデ!」

 みんな、息はしていたけど、ひどい怪我だった。

「ワタルくん!」

 隣でそんな声が聞こえる。見るとそらさんが回復結界を出してた。ワタルさんの方が怪我は浅いし、あれなら間にあう。

 でも、私の力じゃ、皆間に合わない。一番近くにいるフウくんを抱きしめる。

「サクラ…逃げ、て…。」

「むり、むりだよ…皆を置いて逃げるなんて、出来ないよ…。」

 泣きながらそう言う。フウくんは何か言おうとしたけど、声にならないようで、浅い息を繰り返していた。

『サクラ…。』

 そんな時、声が聞こえる。どこから聞こえるか分からない。でも、それはたしかに御先祖様の、サクラさんの声だった。

「サクラ。」

 それのすぐ後にベルゼブルのが私を呼ぶ。きっと、あの夢と同じ事を言う。

『使って。』

 そして、サクラさんの声。使うって、何をですか?心の中でそう問いかける。

「そんなやつに構ってないでこっち来いよ。」

 ベルゼブルにそう言われる。そっちには、行きたくない。

『私が使えなかった、サクラの魔法。』

 私の問いかけにサクラさんはそう答える。サクラの魔法って、何?

「いや、です。」

 私がそう言うと、「そう。」とだけ言ってこっちに来る。しかも、後の二人も。

 その時、思いだしたんだ。昔、御先祖様が、私が殺される直前。使おうとした魔法。使えなくて、私が命を落とす原因になった魔法。

「そう、君は自分の運命を受け入れるんだ。」

 そう言ってベルゼブルが剣を振りかぶる。

 そして―


 そして私はその時、やっと使えたんだ。あの魔法。『サクラの魔法』が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る