第6話~仲間と共に~

 本部に戻ってからカエデの事情聴取が始まった。担当は俺とアスカ。私情を挟まないと言ったら嘘になるけど本部長にお願いして担当にしてもらった。

「さて、まず記憶を取り戻してはいるんだね?」

「ああ、取り戻してる。お前たちの初めて会って時に思い出した。」

 やっぱり、俺が思ってたのと一緒だ。何となくそんな期待を持っていた。

「じゃあなんでサクラをさらったの?」

 そう言ったのはアスカだ。そう、どうしてさらったのか、どうして危険な目に合わせたのか…。

「自分でもどうしたらいいか分からなくて、さらった後に抜け道を教えて一緒に抜け出そうと思ってたんだ。まさかやつが盗み聞きしてるなんて、思ってなかった。」

 そう言って項垂れてしまった。確かに抜け道があった。実際に俺たちはその道を通って助けに行った。どうすべきか分からず、アスカを見るとアスカも困った顔をした。

 その時、窓がコンコンと叩かれた。サクラと本部長が見てるはずだからきっとどちらかが話したいことがあるんだろう。

「ちょっと失礼。」

 そう言って席を外すと扉の前にサクラがいた。

「サクラどうしたの?」

「あのね、カエデの言ってること、本当だと思うの。」

 サクラはそう言うと、あのブレスレットを取り出した。確か、録音機能も付いていたはず。サクラはそれを再生した。

『ごめん。再会がこんな形で。本当に申し訳ない!ただ、少し言い訳を聞いてくれ!

 俺、お前を見るまで、記憶が戻ってなかった。お前の事を、認識出来なかった…。

 一年前、あいつらに出会ったんだ。その時俺、金に困っててさ、いい金で雇ってやるって言われて、それからあいつらの下で働くようになったんだ。そしたらいきなり写真を見せられて『この子を攫えって』言われて。おかしいとは思ったけど、雇われてる人間だから、何も言えなくて、何も考えずに仕事をしようとした。

 でも、お前と、お前たちと会って、名前呼ばれて、思い出したんだ。大事な妹だって、守らなきゃいけないって。そう思った。あの剣も、下ろすつもりはなかった…。

 本当にごめん!お前を危ない目に合わせて!怖い事ばっかして!許してほしいなんて言わない。もう二度と会うなと言われればお前を逃した後、俺もここから出て、身を潜める。だから、あの…。』

 そこで咲良は再生を止めた。カエデの声で嘘はないのは分かった。

「ここまで私に言ってくれたの。騙されてたんだよ、カエデは。だから…。」

 そう言うサクラの頭にポンと手を置いた。

「分かった。本部長と話がしたいから呼んできてもらっていい?」

「…!うん!」

 そう言ってパタパタと走っていく。すぐに本部長を連れて来てくれた。

「本部長、彼が嘘をついているとは思えません。それにカエデはサクラの儀式にとって大変重要な人物です。彼を仲間に加えたいのですがよろしいでしょうか?」

「うむ、サクラから話は聞いている。よいだろう。仲間は多いほうがいいからね。」

「「ありがとうございます!」」

 サクラと一緒に頭を下げる。そして二人と別れて中に入る。

「なんだって?」

「サクラのおかげで、カエデも俺たちの仲間になることになったよ。」

「ほ、本当か!?」

 そう言ってカエデは立ち上がる。

「ああ、その代わり、もう変なことしないように!」

 俺がそう言うと「ああ、分かってる。」と言った。

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