第3話~静けさ~

 昨日、そらから聞けた想い。昔、僕たちは似たような境遇にいたんだ。自分だったらほっとかれると思う。でも、そらみたいにかわいい子なら…。いや、そらだからほっとけない。

「守るよ」

 そう思ったら口に出ていた。


 まずは情報収集をしないと。確か今日は東呉さん休みだと聞いていた。こんな朝早くに行って失礼かもしれないけど…。そらがまだ寝てる時間。この時間じゃないと、動けない。

 東呉さんは書斎にいることが多い。仕事を持ち帰ってるらしいけど、そらには内緒にしたくて書斎にこもってるとそらから聞いたことがある。バレバレなんだね。

「失礼します」

「ワタルか。そこに座りなさい。すまないがきりのいいところまでやらせてくれないか?」

「はい、もちろんです。」

 指定された椅子に座って待つ。

 しかし、この部屋は難しそうな本がたくさんあるな。今度一つ借りてみようかな。

「すまない、待たせてしまったな。」

 そう言って東呉さんは俺の前に座る。

「で、用件は何かな?」

「そらの父親、あなたのお兄さんについて教えてほしいのです。あと3年前の事件についても。」

 俺がそう言うと東呉さんは怪訝そうな顔をした。

「兄貴の…。なぜ知りたいんだ?」

 まあ、そうなるよな。でも、知らなきゃ始まらない。

「今回の事件、3年前の事件が関係しているかもしれないんです。」

「何?」

 そう、今回の事件と3年前の事件、何となく関係がある気がした。ただの勘だけど…。

「もし、この事件に黒幕がいるとしたら、それはそらの父親だと思ったんです。ケッタの一族がこの場所を、ましてやそらが『ヒンメロ・アンジェロ姫』だということが分かるはずがない。しかし、父親なら知っていたんじゃないですか?」

「そうか…。確かに兄貴なら、分かったかもしれない。」

「だとしたら、ここに来るのも時間の問題です。」

「・・・っ!」

 そう、これがそらに聞かれたくない理由。これを知ったらそらは怯えてしまう。だから、この時間に動いたんだ。

 俺の言葉に東呉さんは考えるそぶりを見せたが、すぐに頷いてくれた。

「…兄貴なら、か…。分かった、すべて話そう。ただ、分かっていることは少ないが…。」

「構いません。少しでも分かることがあるなら、それに越したことはありませんから。」

 そう言って話が始まった。

 長くなるから省略するけど、分かったことは誰もこの事件の詳細が分からない事。当時そらも頭を打っていることと、母親を殺されたショックで混乱していたし、他に見ていた人もいない。防犯カメラにも帰って来るそらの映像はあったけどそこからの映像は何者かによって消されてしまっていたらしい。

「消したのはおそらく…。」

「兄貴しかいないだろう…。」

 そうだろうな。でも、何のために…。

「…そろそろ、そらが起きる。これ以上の事は、また改めて話そう。」

 時計を見てハッとする。かなり長い時間話し込んだみたいだ。

「分かりました。俺も少し考えてみます。」

「ああ。私も、色々調べてみるよ。」

「お願いします。」

 そう言って俺は部屋を後にした。この後、俺はものすごく後悔をした。俺は、もう少し残るべきだったんだ。

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