⑥カラカル
実験
パークにて
「この頃フレンズを違法に誘拐する組織の存在が確認されています。パークの警備を強化すると共に、各自パークガイドはフレンズへの注意喚起を行ってください」
「...いい?カラカル。あなたを悪く言うつもりは無いけど、このさばんなはフレンズの連れ去りが多いから気を付けてね?
怪しい人にはついて行っちゃダメよ?」
「わかってるって!
私はサーバルよりバカじゃないから平気だもん」
「こらっ...、そうやって油断してると
怖い目に会うんですよ?」
「平気だもーん!」
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件名:ご注文承りました。
本日ご注文頂きました『カラカル』は
2週間以内にお届け致します。
尚、送信メールアドレスは3時間後に無効となりますので、返信等はされませんようお願い致します。
お客様につきましては、この買い物を持ちましてスタンプが5個溜まりましたので、
素敵なプレゼントを送付させていただきます。
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「ふぁー...っ」
大きな欠伸をして目を覚ました。
しかし、そこはパークの美しい景色ではなかった。鉄格子の中に入れられている。
「えっ...」
(ま、まさか、これは夢...!)
頬を抓るが、景色は変わらない。
「そんな...」
絶対に自分だけは捕まらないと思っていたのに。コンクリートの地下室の檻に閉じ込められている現実。
柵を叩き叫ぶ。
「誰かっ!!誰か助けてっ!!」
しかし反応はない。
「ねえっ...!!誰かっ!!」
「こんにちは、カラカルちゃん...」
彼女の目の前に現れたのは、
数々のフレンズを道具の様に扱ってきたあの男だ。
「ここから出して!!」
柵越しに訴える。
だが男は捕えられたカラカルを見て怪しく笑うだけだった。
「カラカル、後ろを見てごらん」
「えっ?」
言われた通り、後ろを振り向く。
「え...、なに...これ...」
水色の二足歩行の物体。
それはパークで見たセルリアンその物だった。
1つ目がギョロっとカラカルを見つめている。
「そのセルリアンは特殊でね...
まあ君が朽ちるのをじっくり見させてもらうよ」と、上に戻って行った。
「ちょっと!どういうこと!?」
“グルルルル....”
唸り声でカラカルは振り向いた。
檻の隅に移動する。
「石がない...」
“グルルルルッ!!!!”
セルリアンは雄叫びを上げてカラカルに向かった。
「いっ...!」
すぐさま距離を取るが横もそれほど余裕がある訳でもない。彼女は反対側に行くが、
無駄な足掻きだった。
触手が伸び彼女の右足に巻き付いた。
バランスを崩し前に倒れる。
「嫌だ!離してよっ...!」
ズルズルと引き摺られる。
“グゥオオオ...”
彼女の右足がセルリアンの中に取り込まれる。
「いやあっ!!!いやああっ...!!!
離してっ!!はなしてぇぇぇっ....!!」
体を抗わせる。
思いっきり右足を引き抜いた。
「ハァッ...ハァ...」
右足に履いていたはずの靴がない。
足はベトベトしていて、気持ちが悪い。
こんなセルリアンは初めてだった。
セルリアンに食べられるという事は、
フレンズにとって死を意味する。
目に涙を浮かべ、呼吸を乱しながら狭い空間を逃げ惑う。
「イヤっ!!!来ないでっ...!!!!」
だが、セルリアンは素早く動く。
壁際に追い詰められたカラカルの左腕に吸い付く。もはや、定まった形など存在しない。
「ああぁぁぁぁっ...!!
やだあぁぁぁっ...!!」
左腕を必死に引っ張って抜く。
しかし、その反動で尻餅をついてしまった。
「やめてっ...、ハァッ...、やめ...」
彼女の命乞いが感情を持たない捕食者に
通用する訳が無い。
「嫌あぁっ!!!」
セルリアンは彼女の上半身を飲み込んだ。
捕食者の中で声を上げる。
「んーッ!!!!!!んーーッ!!!!」
“グルルルァッ...”
「はあっ...はあ...はぁ...はあ...」
涙と捕食者の液体で身体がベトベトする。
「いやだ...、やだ...、やだ...
しにたくない...」
上着は溶かされてしまい半裸の状態。
耳が萎れているのはサンドスターを吸収されたからかもしれない。
体力も奪われた。
地道にこうやって、生命を奪われて行く。
四つん這いになって逃げようとするが、
捕食者の魔の手からは逃れられない
「うぐあっ...」
触手でクビを強く締められる。
「がぁっ...いやぁ...」
赤子の様に高く持ち上げられる。
勿論、重力でクビだけに負担がかかる。
カラカルは息苦しさに蝕まわれる。
遂に捕食者は彼女を自身の体内に取り込んだ。
取り込まれてしまった彼女の顔は疲れ切った顔をしていた。口をだらしなく開け、
いや、何かを伝えようとしていたのかもしれない。
「...よし、10分か」
リビングでカラカルの様子をテレビを通じて観察していた男は下の階に降りた。
檻の中には、尻尾が半切れになり、スカートも何かでズタボロに切られたかの如く
朽ちており、耳は完全に消失していた。
中途半端に吸い取られたその“存在”は
息をしていない。
「結構いいプレゼントじゃないか...。
お手軽セルリアンキット...」
常連で良かったと男は思った。
死体に興味は無いので、後で埋めるか燃やすかしておく。
人間の技術力で、そして、男の身勝手な欲望のせいでまた、尊い生命が失われた。
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