⑤コウテイペンギン

ダイエット

ガシャ...


鎖の動く音がした。


「なんだなんだ。

そのだらしない身体はァ?」


男はゴルフクラブで彼女の豊満な胸を

下から揺らす。


「...」


「コウテイペンギンはデブだな。

俺がトレーニングしてやるよ」


そう。あの男だ。いつもの様に

裏取引で注文したのだ。


彼女は首輪で壁に繋がれ手は手錠で動かせない。


「許して...帰して...」


「ダメに決まってんだろ。

お前がダイエットするまでな」




そう言われて監禁生活が始まった。



3日目


水も、食料も与えてくれない。


「...なにか...食べ物を...」


「お前はダイエット中だ。ダメだ」


「...」


気分が悪い。お腹の中は空っぽなのに何かを吐き出しそうだった。


4日目


「水だけやるよ」


力無く地べたに座り込む彼女の口に4日ぶりに物体が入った。


「...」


ただのお水だが、コウテイには美味しく思った。


この日から1日1杯の水が出されるようになった。


しかし、足りない。


「おなか...すいた...」


口数も少なく、1日数回ポツリとそう呟くだけ。


7日目、コウテイが目覚めると、手錠が外されていた。手の届く場所に鍵が置いてあった。


自分の首を触って確かめる。

南京錠がついている。

鍵で開くタイプだった。


「...」


彼女は生唾を飲み込み、鍵に手を伸ばした。






夜19頃。

男が帰宅した。彼がリビングのドアを開けると驚くべき光景が広がっていた。


「...」


大量のお菓子の空になった袋、

ペットボトル、食材...


「おいおいおい!」


語気を強めながら、キッチンに向かうと

そこに居たのは食パンを貪り食うコウテイの姿だった。


「これだからデブは」


男は心の中で笑っていた。

これは全て自分で仕組んだものだからだ。


食べ物を大量に購入しておき、コウテイの

手錠を外し、自ら暴飲暴食をするように仕向ける。


もちろん彼女が、その策略に気付く訳無かった。


空腹状態が続き、水しか与えられていない彼女にとって、食べ物は宝物でしかない。


しかしそれが、自分を追い詰める物になるとは思わなかった。


「ご、ごめんなさいっ!」


「ごめんじゃねえんだよ」


男はコウテイの髪を乱暴に掴み風呂場まで引き摺った。


「痛いっ!!ごめんなさいっ!!」


「お前は痩せないとダメなんだよ」


風呂場に連れて行くと再び手錠をし椅子に座らせる。コウテイの口に金属の棒状の物を深く入れた。


「あ゙っ゙...あ゙っ゙!」



噎せた瞬間。


「っ...お゙ぇ゙っ゙...」



彼女の口から、気持ち悪い物が出る。

目からは涙を浮かべる。


大きな胸にも汚れがかかった。


「汚ねえペンギンだなっ」


男は彼女の顔を思いっきり蹴った。


ガコンっ!


鏡台に頭をぶつける。


「いだっ...いだいっ...」


「暴れると痛いぞ」


男はそう言うと、シャワーを彼女に掛けた。


「あっ...!はがっ...!」


「このデブ!デブ!デブめっ!」


「あああっ...!ハァッ...!はぁうぁ

ああああああああぁぁぁっ!!!!!」


男は問答無用で彼女の胸を足で何度も踏み付ける。片足で全体重を掛けるのでその

負担は計り知れない。


男は手品師のようにまた道具を使った。


「いあっ!!いやだ...!!」


「黙っとれこの豚野郎」


連続で彼女の胸にも裁縫用の針を刺した。


「痛い痛い痛い痛いいいっ!!!!!」


「バカ」


刺した所にシャワー


傷口にしみて想像もつかない痛さになる


「ああああああっ!!!!!!!!

あああああああああっ!!!!」


白い服は赤く染まった。胸の所だけ特に。


ずぶ濡れになり針が刺さったままのコウテイを男は力づくで脱衣所まで引っ張る。


「うっ...あう...」


そして脱衣所の洗濯機の上にある棚から

漂白剤を取り出しコウテイの口に無理矢理流し込んだ。


「あ゙あ゙っ...」


「お前は一生何も食えないようにしてやる...!」


息ができない。

気持ち悪さだけが、付きまとう。


漂白剤はもちろん人が飲んではいけない。

フレンズも同様である。


空になったのを確認すると男は、その場から離れた。


コウテイはうつ伏せに倒れた。

倒れた時に刺さったままの針が胸に食い込む。そして、胃の中のものが逆流した。





1時間後、男が脱衣所に戻るとコウテイは既に死んでいた。口から抽象画に使われているような色の液体を吐いていた。


恐らくは吐いたものが器官にでも詰まった

窒息死だろう。


掃除は面倒臭いが男にとっては

快感だった。


彼女もまた、過去に理不尽に殺された同じペンギンの彼女の様に焼却炉に捨てられ、灰になった。

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