第117話

 その頃、シルヴィアたちは電車に揺られていた。生憎空いていたので、シルヴィアとメルは隣同士に腰掛けて、それから少し離れてファルバートとリュートが座っているという現状である。決して喧嘩をしているわけではない(寧ろファルバートの方から勝手にふっかけてきた喧嘩と言っても間違いないだろう)のだが、事情を知らない周りから見れば喧嘩でもしたのだろうかというふうに思われてしまうのだ。彼女たちの外見と年齢がその論を後押しするだろう。彼女たちは十歳、まだ一年生なのだから。


「なんというか、あのファルバートってのやな感じよね。学力もリリーファーを操る能力も低いのにさ。『実力は関係ない!』みたいな言い回しして」


 言ったのはシルヴィアだった。メルは小さく溜息を吐いて、それに答える。


「違いますよ、シルヴィア。あくまでも彼が言ったのは入学試験は関係ないだろということです。入学試験ごときで実力を発揮できないようじゃあ戦場でどうなるかしれたものだと……本で読んだことがありますが」


 それを聞いていたファルバート――実質そんな遠くない距離に四人が座っているため、けっこう声が聞こえてしまうのだ――は歯噛みした。今にも彼女たちの場所に向かってやろう――そう思わせる気迫を放っていた。

 しかし、


「よせ」


 それを制したのはほかならないリュートだった。

 リュートの話は続く。


「ここで小物感を見せても相手にとってはいいことだらけであることは、いくらなんでもファルバート、君にだって理解できているはずだ」

「だが……!」

「だがも何もない。言わせておけばいい。そしえ実力で示せばいいじゃないか。聞いた話だと、明日にはどちらが本物のリーダーかを決めるための模擬戦が組み込まれているのだろう? だったらそこで決めればいいじゃないか。そこでほんとうのリーダーを決めるんだよ。どちらが優れているかを、その場で」


 リュートの言葉は全然欺瞞だとかそういうものは含まれていない、純粋なものであった。だからこそ、恐ろしい片鱗を感じる。きっと、ファルバートは常常思っていることだろう。彼が恐れているのは父親よりも――このリュートなのではないかということに。リュートは彼の父親に操られているパペットに過ぎないのかもしれない。だが、それが嘘だったら? 本当は父親が操っているように見せかけられているだけに過ぎず、父親をリュートが操っているのだとすれば?

 解釈は大きく異なってしまうだろうし、出来ることならあまり考えたくないことである。だが、起動従士になるにんげんとしてはそういう『最悪』のケースをも想定せねばならない。そしてその『最悪』への対処法も同時に考える必要があるのだ。


「……おっ、ターム湖だね。きれいだねえ……この時期の湖なんてあまりお目にかかれないよね。なにしろ、ここまで来ないし」


 そう言いながらリュートは振り返る。どうやらターム湖の近郊まで列車は到着しているらしく、車窓からそれが眺められるというのだ。それを聞いてファルバートもそちらを見る。そこに広がっているのは青々とした海――否、湖だった。時折太陽が反射して、輝いている。時期も時期ならばここに海水浴めいて泳いでいる客も多くいるのだが、今は時期があまりにも早すぎた。もう二ヶ月ほど遅く来ていればたくさんの人間でごった返していたことだろう。余談だが、泳ぐことは一年中可能である。なぜならターム湖の水温は常に十数度を推移しており、非常に温暖だからだ。

 ファルバートはふと気づいてシルヴィアたちの方を見る。どうやらシルヴィアたちもそれに気づいてターム湖を眺めていた。ずっと、ではないが少しその様子を眺めていると視線に気づいたのか、メルと目があった。

 メルはファルバートがその視線の主であるとわかると、一瞬だけ睨みつけてすぐにターム湖へと視線を移した。

 どうしてこんなばかなことをしたのだ――とファルバートは思いながら再びターム湖へとその視線を移すのだった。

 ターム湖の畔にある小さな駅。それがマーズとシルヴィアたちの待ち合わせ場所であった。その駅にはショップもなく、待合室とトイレしかない。しかもその待合室にはエアコンが備わっていないから、暑さをしのぐことは出来ない。精々日光が遮られるくらいだろうから、感覚的には何度か涼しいのだろうが、しかし彼女たちにそれが変わった実感など無かった。


「熱い……この待合室ってエアコンとか扇風機とか、そういう送風機がないのかしら」

「駅事務室に行けばエアコンくらいありそうな気がするけど? だってあそこは精密機械盛りだくさんだし」


 メルの返答を聞いてシルヴィアはうんざりしたような感じである一点を指差した。そこは駅事務室――たった今メルが言った場所だ。だが、そこは今シャッターで閉められている。


「何でかは知らないけど、駅事務室は閉まっている。簡易的な機械はあるから駅の業務はそれで何とかなるんだろうけど、それでも何か納得行かないよね。それじゃあ、駅事務室に居る人間の意義はどうなるのかって」

「別に、切符販売が駅事務室の仕事では無いと思うけど?」


 メルの言葉にシルヴィアは肩を竦めて、


「きみきみぃ、そんなことを言いたいんじゃないんだよ。業務内容はともかくこんな時間に休んでること。こーれーが、議論の論点、略して議論点だよ」

「なんだかよく解らないけど、キャラクターをつけるのに必死ということでいい?」


 メルはシルヴィアの言葉をばっさりと切り捨てて、話を続ける。


「……何だかなあ。最近私に厳しくない? なんというか、適当にあしらっておけば何とかなるとか思ってない?」

「チッ。ばれたか」

「今明らかに舌打ちめいた、いや、確実に舌打ちしたよね!? 絶対にしたよね!!


 今のは見過ごせないぞいくら私たちが双子だからといって!! 許せるものと許せない、境界ってものがあるんじゃないかな!?」


「暑苦しいよ、こんな熱い場所でがやがや言ったって意味もなにもない。寧ろ暑さが増すだけ。そんなことして楽しいの?」

「あーもう!」


 シルヴィアは頭を掻いた。時折メルはこのように毒を吐く。その相手がシルヴィアのように親族だけにならいいのだが場合によって赤の他人だって吐く。メルの外見は同世代の女子から見ればべっぴんの部類に入るだろうし、現に女友達からもメルが可愛い旨はよく聞いたことがあった。だからこそ、彼女のその毒舌がよく映えて……正確には目立ってしまうのだ。目立たざるを得ないのだ。彼女は才色兼備であるが、その才色兼備が彼女のその悪い癖をさらに増長させるといっても過言ではない。

 ともかく、簡単に言えばメルの毒舌はメルの長所をまったくもって生かしきれていない。もっといえば引っ張っているということである。


「……なんというか、あんたほんとそういう性格直さないとお嫁さんにもらってくれる人いないよ?」

「私はシルヴィアといれれば何の問題もないもーん」


 そう言ってメルはシルヴィアに抱きついた。


「もう、メル熱いわよ!」

「シルヴィアの身体がつめたいんだもーん」


 実際はそんな冷たくなく、寧ろ彼女の方が体温的には暖かいのだが……そんなことはメルにとってどうでも良かったらしい。メルはシルヴィアと居れるだけでただよかったようだった。


「いやあ、待たせたわね!」


 そう言って待合室に入ってきたのはマーズだった。マーズは膨大な荷物を持っている設定だったが、しかしながら今彼女にそういう荷物と思われるものはない。どうしたのだろうか、とファルバートは気になって、訊ねる。


「あの、荷物は」

「荷物? ああ、ここにあるわよ」


 そう言って出したのはあのがま口だった。マーズは笑みを浮かべてそれを見せたが、しかしそこにいるマーズ以外の人間にはその意味が理解できていなかった。

 だから、ファルバートは素直に訊ねた。


「……あの、冗談を言っています? それともふざけています? それともそのどっちもですか?」

「ふざけているつもりは私にはまったくないんだけどなあ……。寧ろこれが何だか気づいてもらわないと困っちゃうよ。これはね」


 チッチッチと。マーズは人差し指を揺らす。


「違うんだなあ。これはまったくの別物だよ。ただの財布ではないんだ」

「ただの財布では……ない?」


 何を言っているのか解らないのか、ファルバートはマーズの言った言葉を反芻する。


「そうよ。これはただの財布ではないの。これは魔導空間に繋がっている財布。媒介といってもいいでしょうね。それを使うことでたくさんの物品をこの財布という軽いものだけで持っていくことができる。非常に便利なものよ。あ、一応言っておくけど質量保存の法則は考えないでね」

「最後は誰に向けて言ったことなんですか……?」


 シルヴィアはマーズの言葉に疑問を抱いて訊ねるが、マーズは「ん? なんでもないよー、ただの独り言だから」と受け流されてしまった。

 マーズは財布をポケットに仕舞うと、


「とりあえずあとから追っかけてくる二年生を除くと全員集まった……ということでいいかな?」

「ここからその運動公園に向かうんですか?」

「いい質問だね、シルヴィア。そのとおりだよ。これから運動公園へと向かう。ここは運動公園の名前を冠していないけど……、実はここが最寄駅な訳。ここから歩けばあっという間にパッという間にたどり着くわよ」


 マーズの言葉を聞いて、とりあえずシルヴィアたちはそれに従うことにした。目指すは運動公園。その運動公園まで、残りあと少しである。




 崇人とヴィエンスが学校を出たのは、アリシエンスが担当している授業が終了したそのタイミングであった。本当は自習だったためか直ぐに出て行っても良かったのだろうが、結局は課題が終わらなかったためにこの時間まで残ってしまったということだ。


「急いでいかないと。待たせちまってるな」


 崇人の言葉にヴィエンスは頷く。

 崇人は急いで駅へと向かうため走り出した。

 ――ちょうどその時だった。

 彼の目にある少女の姿が写りこんだのだ。その少女は可憐な少女だった。銀髪で、白いワンピースを着ている。その姿を彼は忘れたわけではなかった。

 少女も崇人の方を見ていて、微笑んでいる。


「覚えている?」


 その声はとても透き通っていた。そしてその声を聞いて直ぐに記憶が蘇っていく。

 ティパモールの、『赤い翼』アジトで出会った少女だ。しかしながら言動がこの前と比べると少しだけ大人びたようにも聞こえる。


「……あの時、姿を消してしまって驚いたんだぞ。いったいどうやってか知らないが、無事だったんだな」

「ええ。だって私は――いや、それは言わないでおいたほうが面白いかも。私はとりあえず『この世界の記憶』を私自身に植え付けなくちゃいけないの。この世界の記憶が植え付けられれば植えつけられるほど、私の身体は精神は成長していく」


 とどのつまり。

 そこに立っている少女が前会った時より成長しているのはそういう事由から来ているのだという。

 だがそれを直ぐに理解できるのは少ないだろう。彼もその例に漏れなかった。


「……世界の記憶を植え付ける。それに何の意味があるんだ? まるで――」


 崇人が言おうとしたそれを理解した少女は首を横に振る。言わなくてもいい、ということだろうか。

 少女はそれに応えるように口を開ける。


「あなたが考えていること、私に言いたいことはだいたい解っている。だから、それを言わなくていい。記憶を植え付けている、記憶を私の中にコピーして蓄積しているのは……あくまでも私の意志だということを忘れないでいてくれるなら、それでいい。それだけでいい」

「それってつまりどういうことだ――」

「おい。何をぶつぶつ『ひとりで』喋ってるんだ?」


 それを聞いて彼は現実に引き戻される。その声の主はヴィエンスだった。それを聞いて彼は振り返る。

 ヴィエンスは怪訝な表情を浮かべながら、そこに立っていた。


「いや、ちょっと考え事を……」


 直ぐに崇人は戻る。

 しかし、もうそこには少女の姿はなかった。

 あの少女は、いったい――。崇人は頭脳を回転させるが、しかしその結論がすぐに出ることはなく、結局ヴィエンスとともに駅へ向かうほかなかった。




 結局、ヴィエンスと崇人が運動公園のマーズたちがいる場所に到着するまでに二十分ほどの時間を有した。二十分だけ、ではあるがそれでもその時間は大きい。マーズが持ち込んだであろう食べ物は三分の一程度が消費されており、新規にコンビニエンスストアで買ってきたものも幾らかあった。


「……いくらなんでも消費のスピードが早すぎやしねえか?」


 崇人は言いながらブルーシートの空いている……ちなみにそのスペースはちょうどマーズの隣しか空いていなかったのだが、そのスペースに腰掛ける。

 マーズは笑みを浮かべて、


「だって二十分よ? たかが二十分と思うかもしれないけど、されど二十分ともいえるでしょう? その時間は限られていて、決して許容される範囲ではない。そして早く来ている人間が大半を占める。なのに少数を待つんですか? もし飴でも降ったらどうなさるつもりで?」

「飴でも降られたらとんでもないよ。というか、イントネーションおかしいぜ。雨なら、『あ』めになって、『あ』の方が上がるはず。でもそのイントネーション、あが下がっているタイプだとキャンディのほうの飴がヒットしてしまう」

「いや、わりとどうでもいいわよ!」


 崇人が突然飴と雨の違いについて語り始めたのでなんだか面倒くさくなってしまったが、それでも一応ツッコミはいれる。

 崇人はタッパーの中に入っているミートボールをつまみ食いして、


「おっ、美味い」

「それはあんたがずっと美味しい言ってるお店のミートボールだもん。そりゃ、当たり前でしょ」


 それを聞いて一番驚いたのはシルヴィアだった。


「え……それじゃこれってマーズさんが作ったわけじゃ……」

「こいつ料理は全然からっきしだぞ。ひどいレベルだ。というかまったく出来ない」

「そこまで言わなくてもいいんじゃない!?」


 マーズは行き過ぎた(しかし真実だ)発言について即座にツッコミを入れる。でもやっぱり真実だから否定することなど出来ないのだ。

 もし真実ではないのならすぐに否定すればいいのだから、否定しないということはそれは真実であるのだ――そんな逆説的な考えに至ったシルヴィアはマーズの一面を垣間見たようで嬉しい反面彼女に対するイメージが若干崩れたような気がした。


「ま、まあ……今回の主役はご飯でも運動公園に広がる緑でもない! これよ!」


 じゃじゃーん! とわざとらしく言って両手をそちらに差し出す。

 そこにあったのは木だった。花が咲いていたらしく、その花は桃色――どちらかといえばピンク色のほうが近いかもしれない。

 そしてそれは崇人が昔いた世界で見た『桜』の木と一緒だった。


「桜だ……」

「そう、サクラ!」


 マーズはそう言って笑みを浮かべる。マーズが言った時は冗談か聞き間違いかのいずれかではないかと思っていたがいざ本物を見てみると違う。やっぱりこれは桜だ。桜に違いなかった。

 だとしたら疑問を抱くのは、もちろんこの世界の時系列についてだ。この世界は崇人の元いた世界から見てどういう時系列の上に成り立っているのか? 未来なのか、未来だとしたらどれくらい未来なのか、それともパラレルワールドめいた空間なのか。それはまったく解らない。もしかしたら偶然こういう歴史が作り出された異世界の可能性だって捨てきれない。


「……タカトさん、どうしたんですか? 急に考え事をしちゃって」

「ん……ああ、いや。サクラがきれいだなあと思ってな」

「そうですよ」


 シルヴィアはおにぎりを頬張って話を続ける。


「はっへほほほはふははほへほひへひへふーへひへふははへ(だってここのサクラはとても綺麗で有名ですからね)!」

「シルヴィア。話すときは口の中をカラにしてからにしましょう。は行だけじゃ話がまったく伝わりません」

「はは……ほふへひは(はは……そうでした)」


 シルヴィアはそう言って照れ隠しなのか笑みを零す。

 ふと崇人はファルバートとリュートの方をみた。彼らも食事に興じているようだがどことなく進んでいないように見える。それどころかあまり会話にも参加してこない。


「おい、どうした。少しくらい会話に参加したらどうだい?」


 言ったのはヴィエンスだった。その言葉には皮肉が篭っているようにも思えた。ヴィエンスは初対面だったファルバートにあんな呼ばれようをされたのである。怒らない方がおかしい問題だ。

 ファルバートはヴィエンスの方を向いていたが、顔を背ける。


「別にあなたに言う問題もないでしょう。私は話したくないから話していないだけ。ただそれだけに過ぎないのですから」

「あのなあ……そんなこと言ってチームでやっていけると思っているのかよ? チームでやっていくにはそんな自分勝手な行動は……」

「あーら、かつての大会で自分勝手な行動をとっていたふうに見えたのはどこの誰かしら。というかあれは実際全員そうだったか。でも最初はあなたも私利私欲のために動いていたわよね」

「マーズ、今はそんなちゃちを入れないでくれ。話の腰を折ることになる」

「折りたいから話に割り入ったのだけど?」

「最低だな、アンタ」


 ヴィエンスは薄ら笑いを浮かべると、おにぎりをひとつ手に取る。おにぎりは凡て海苔は巻かれておらず米が|露(あらわ)になっている。


「おっ、梅干か。あたりかな?」

「別にあたりはずれを入れたつもりはないわよ、たぶん。それはあっち側の配慮だし」

「まさかこれも?」


 崇人はおにぎりが入った箱を指差す。

 対して、マーズは小さく溜息を吐く。

「おにぎりを握る時間なんてないんだもん」

「それくらい頑張れよ!」


 崇人はそう言って残った最後の一個のおにぎりを掴んだ。このままだと自分はおにぎりを食べられないままおかずだけの食事になってしまう――それを恐れたためだ。でも実際にはまだおにぎりの入っている箱はひとつふたつ用意されていて、それはまだ魔導空間の中に入っていることを崇人は知らない。知っているのはマーズのみだ。余ったら家に持ち帰ればいいと考えているためか言っていないだけであるのだが。

 崇人は梅干味のおにぎりを頬張りながら、紙パックのストレートティーを啜る。ストレートティーしか紙パックがないと聞いたときはどうしようかと思ったものだが、砂糖が入っていないのだからそれほど違和を抱くものでもなかった。普通におにぎりとストレートティーは合うものだし、よくコンビニエンスストアでも組み合わせとして販売される。


「ストレートティーはおにぎりに合わない! なんてことを頑なに言っている人もいるけど、私はそういう人って大抵試さない人だと思うのよ。こういうのが効率がいいんだとか言ってるけどそれを試しているかも怪しい。だから私はそういう人の意見を頷いて理解して従う前に、本当にそれを実践したの? って聞くの。ちゃんと実践しているならいいんだけど、しどろもどろな返事をした場合は従わないね。なんだか自分が実行していないのにそういうのを言うって、まるで実験台をしてほしいと促しているような感じがして恐ろしいのよ」

「そういうものかなあ……」


 そう言って崇人は順調に食べ進めたおにぎりを口の中に放り込み、卵焼きをひとつ取った。卵焼きの中は半熟めいていて少し甘い。卵焼きの味といえば甘いか塩気があるかのどちらかに制限されてしまい、さらにそれで派閥が分かれてしまっているから味を決めるのは結構難しいことだ。


「甘すぎず、塩っぱすぎず……それでいてこのおにぎりの梅干にマッチする……。なんだこの卵焼き……、もしかしておにぎりを作った店と一緒だったりしないか?」

「え、なんで解るの?」

「マッチングしてるからだよ。味がうまく構成されている。これは同じ店でつくってないと帳尻合わせするのが難しい。だから言ったんだ。たぶん、同じ店かな、って」

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