第59話 【追記】神社
上田正昭(京都大学名誉教授)によれば、古代の神社には「
神社といえば本殿があり、拝殿のある鎮守の
神社や社を「もり」と呼ぶのは、聖なる樹林が神の
奈良県桜井市三輪の
[神社の起源]
神社信仰の成り立ちに朝鮮半島、特に弁韓(後の加耶)・辰韓(後の新羅)地域が深く関わっている。弥生時代から古墳時代にかけて朝鮮半島から渡来してきた人びとの多くは、距離の近さや海流からして、馬韓(後の百済)が立国する朝鮮半島の西部よりも加耶・新羅の国々が立国した朝鮮半島の東南部の人びとであった。したがって、加耶・新羅と倭国の関係は百済との関係よりはるかに古い。朝鮮式無文土器は北部九州や出雲地方の縄文・弥生遺跡から発見されている。このような弁韓・辰韓との古くからの関係を見えにくくしているのは、白村江の敗戦の後に渡来してきた百済人が編纂に参画した日本書紀の新羅敵視観にあるといえる。新羅による金官加耶の併合(532年)から始まり、加耶諸国の滅亡(562年)、そして白村江の敗戦(663年)に至る一連の出来事による新羅蕃国視、さらに下って明治以降の朝鮮蔑視から、新羅系神社の多くが白木・白城・白井・白国・白鬚などと名を変えた中で、今なお新羅神社を名乗る神社は数多くある。日本で最も数の多い神社である八幡神社・稲荷神社も元来は加耶・新羅系の
田中卓(元皇學館大學長)によれば、日本の神社史を考察する上で、最も基本的な課題は
[神社の誕生]
卑弥呼の倭国連合ができる前、日本列島は群雄割拠状態であり、大小様々な豪族が覇を競い合っていた。これらの豪族たちにはそれぞれ奉ずる神がいた。まさに
斉明5年(659年)に出雲宮の修造記事があり、これが事実上の出雲大社の造営の初例のようである。天武5年(676年)には大和国の広瀬神社の記事が現れた。古墳の造営が終末に近づくなかで、天武・持統期に氏族の過去にまつわる記事の提出を求め、氏族の祖先となる神々の確立とそれを祀るための常設社殿の造営を進めた。
[神宮と神郡・神階]
古代において神宮号を持つ神社は
神郡とは、中臣氏の申請により大化5年(649年)の孝徳期に朝廷から認められ、設置された神社の領地である。神郡を持っていたのは伊勢神宮・鹿島神宮・香取神宮・
神階とは神社の位である。奈良時代まで「伊勢神宮」、紀伊の「
神社は律令国家大和朝廷による日本列島統一の前線基地であると同時に、畿内の文化を発信する場でもあったといえる。特に常陸の鹿島神宮と下総の香取神宮は、伊勢を出発地とした関東・東北地方の
[
奈良県桜井市。日本最古の神社と喧伝されている。2~3世紀ごろ奈良盆地に成立した初期ヤマト王権により最初に祭られたのが
[
奈良県天理市。伊勢神宮と並ぶ最古の神宮である。かつては本殿がなく、明治7年まで拝殿後方の禁足地に主祭神が埋納されていた。主祭神の第一の
[
鹿島神宮は茨城県鹿嶋市に鎮座し、祭神は武甕槌(タケミカヅチ)大神である。香取神宮は千葉県佐原市に鎮座し、祭神はフツヌシである。フツヌシもタケミカヅチも、火の神であるカグツチの子孫とされるが、本来は同一神であったと思われる。ニニギによる天孫降臨の成就以前に、アメノホヒ(出雲氏の祖先)の系統の神々(アメノワカヒコ等で、最後はアメノトリフネとタケミカヅチ)による葦原の中つ国(出雲)への降臨が次々と繰り返されたと伝承されている。鹿島神宮と香取神宮は霞ケ浦の入江付近に利根川を軸として対称の位置にあり、鹿島・香取の神と並称されるように両社の関係は深い。物部氏は、大和の東南部および河内の渋江を勢力拠点とし、フツヌシを奉斎する。したがって、最初は物部氏が鹿島・香取とも武神として祀っていたといわれる。6世紀後葉、仏教公伝を機に、崇仏をめぐって物部
平安時代中期(905年~927年)に編纂された
平安時代後半になると、諸国の官社は、中央から任地に赴いた国司が神拝する順序に応じて、一宮・二宮・三宮・・・と称されるようになり、これも社格になった。特に一宮はその国の総鎮守に位置付けられた。それは諸国一宮制である。このランク付けは天皇を頂点とし、貴族・豪族がその下にあって全国を統治する古代日本の政治システムをそのまま反映させたものであった。
やがて畿内の文化を発信する場であった神社は、日本の独自文化となった。一方、日本において、儒教や仏教は文字を伴った新しい思想や技術の受容に重きを置くものであった。今日のキリスト教と同様、仏教の仏は外来神であり続けた。
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