3-2 俺たちの邪魔をするなっ!

 体育館ではⅤ系バンドクラブが着々と準備を進めていた。あとは人が集まるのを待つのみ。待機時間に、ボーカルはドラムにわざとらしく話しかける。


「お前、ちゃんとスティック持ってきたか?」


 他のメンバーからも同じことを聞かれたドラマーは、ふてくされながら「持ってるよ」と応じた。




 委員長は一人で体育館横の女子更衣室にいた。ゆっくりとした手つきで、トートバックの中からアレを取り出す。


 アレとは何か。それは、今日の戦いのための鎧だ。




「そこのストサポ! 止まれ!」


 後ろからの聞き覚えのある声に晴樹は反射的に顔をしかめた。さっと立ち止まり、振り向く。


「何でお前がいるんだよ。ごみ拾いはさぼりか? 会長さん」


 丸顔生徒会長は追いつくなり、二人を睨みつけた。


「さぼりではない。地域清掃は別日に延期になったんだ。校内をパトロールしていたら君の放送が聞こえて、君たちのやることを止めるために職員室前から追ってきた」


「丸顔でパトロールって、やっぱりアンパンマンじゃねえか」


 晴樹も会長を睨みつけ、挑発した。


「それを言うな! 君がそう言いふらすせいで、他の生徒からもアンパンマン会長って呼ばれるじゃないか!」


「ストサポを公認にしてくれなかったからだっ!」


 子どもの喧嘩のようなやり取りを癒月はただただ眺める。終わる気配が全くないため、痺れを切らした。


「先輩、時間がないですよ。急ぎましょう」


「そうだな」と晴樹は会長に背を向けた。


 しかし、会長は引き下がらない。


「ライブを開くことは許さない」


 捨て台詞を吐くと体育館とは反対方向に走り出した。晴樹の癖毛センサーは、彼が何をしようとしているかをすぐに察知する。


「あいつ、ライブ中止の放送をかける気だっ! 俺はアンパンマンを阻止する。癒月は体育館に向かってくれっ!」

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