1-3 あいつらのところへっ!
委員長は今までにないくらい大きく、はっきりした声で言い放つ。
「音楽にのって思いっきりヘッドバンキングをしてみたいんです」
その告白に二人は内心驚いた。委員長がヘッドバンキング。おさげメガネからは正直想像もつかないものだったからだ。
ヘッドバンキングとは、リズムに合わせて頭を激しく振る動作である。略してヘドバンとも呼ばれているものだ。
「それって、ロックとかヘヴィメタルとかのやつですか?」
癒月は、彼女の言っているヘッドバンキングが自分の知っているそれと同じものなのかを確かめる。委員長は「そうです」と答えるなり照れ臭そうに顔を背けた。
「自分の部屋でやってみようと思って調べたんです。やり方は何となくわかったんですけど、勇気が出なかったんです。家で一人だとしても全然委員長キャラが抜けなくて、恥ずかしくなっちゃって……」
それで協力を求めて来たのか。
後々、彼女の両親は共働きで帰宅は遅い時間だということも知った。家に一人でいても委員長キャラ。誰にも相談できず、肩の力も抜けなければ、ストレスも蓄積する。
「そういうことか。わかった、協力するぜ」
「ありがとうございます……! とっても助かります」
晴樹と委員長は力強い握手を交わした。両者とも満面の笑みを浮かべている。
「おうよ、それがストサポの仕事だからな。それには俺たちストサポだけじゃなくて、あいつらの力の借りるべきだ。早いこと向かおうぜ」
握っている手をそのまま引っ張り廊下に出た。癒月はまた何か始まったよ、と言いたげにその後に続く。
「どっ……、どこに行くんですか?」
委員長が空いている手でずり落ちそうなメガネを抑える。そんなことはお構いなしに晴樹は足を早めた。
「この学校内で唯一、頭を振り回しまくってるやつらのところさ」
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