第13話
帰り道。リュウに送られながら、生まれ育った懐かしいような、初めて訪れて若干戸惑うような、鳴上来の自宅に帰る。
住宅街の真ん中に伸びる、アスファルトを赤くなった空を見ながら歩く。
「上見ながら歩くと危ないよ」
優しい声色でそう言われて、ふと気づいた事があった。
「ねえ、リュウリィ」
「ん?何?」
…やっぱり。
「リュウ…なんか町田くんとして接してた時と、雰囲気っていうか、なんて言うか…」
「…喋り方、違くない?」
町田くんは、もう少しぶっきらぼうな話し方だった。自分の事を俺と呼ぶのは変わってないけれど、語尾というか、ニュアンスというか…。なんか、雰囲気が優しくなっている気がする。て言うかなってる。
「あー…。多分ライラックと一緒にいたせいかな。なんか、懐かしくて…。つい、…ね」
リュウが眉を下げて優しく微笑む。
その表情は、村で過ごした小さい頃、村から出て、魔法使いとして、剣士として戦っていた頃、何度となく見たものにとてもよく似ていた。その笑顔に、『あぁ…やっぱりリュウリィなんだなぁ』と、改めて実感し嬉しくなる。
「…そう言うライだって、鳴上来の面影…一切なくなっちゃってるけど…。来、そんなに笑う子じゃなかったよね?」
「え、」
思わず頬に手を当てる。言われてみれば、確かに来の時は殆んど話してなかったし、笑ってなかった気がする。
「…どうしよう。…周りに、不審に思われるかな…?」
急に心配になってくる。両親にも、何か言われるかもしれない。
「あ、ごめん、ごめん。脅すような感じになっちゃって。…まぁ、暗くなってたら何かあった?って心配になるけど…、明るくなるのは良い事だよ。うん。大丈夫大丈夫」
私が『そうかなぁ…』と、呟くと、『大丈夫だって』と、頭をポンポンと撫でられた。前世ではやらなかっただろう彼のその行動に、私は嬉しさより、顔が熱くなるような恥ずかしさを覚えた。
…うう、前はこんなことしてる余裕なんてなかったから、免疫が全然無い……。
私は赤くなった顔を見られないように、少し俯いて歩いた。
それきり、リュウは話しかけてこなくなった。
「じゃあ、また明日」
「うん。送ってくれて、ありがとう」
私が家に入ろうとすると、リュウが話し掛けてきた。
「…ライ!…。…大丈夫だよ!明るくなって、悪いと思う人は居ないから!」
私は一瞬なんのことか分からずに、目を数回瞬きさせて。それから笑った。
「…うん!ありがとう!おやすみなさい、リュウ。また明日!」
私はそう言って、家に入った。
「リュウったら。本当に心配症なんだから…」
どうやら私が俯いたのを、まだ不安だからだと思ったらしい。本当は別の理由だったのだけど……
でも、嬉しかった。
私はリビングにいる母に、『ただいまー』と一声声を掛けると、弾むような足取りで、たんたんたん、と階段を上がって行った。
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