第9話
「ねぇ、リュウリィ…」
…本当に、貴方なの?
自室のベランダで、柵にもたれて呟いた。
空を見上げると、深い闇の中に、ぽつぽつと明るい星が見えた。
「…あっちだと、もっと良く見えたのに…」
ここは、都会というほど都会ではないけれど、街灯や家明かりのせいで、星はあまり見えない。今見えているのも、特別明るい星だけ。
でも、私は星がとてもよく見える場所を二つ知っている。
一つは、父方の祖父母の家近くの大きな森林公園。公園の中に森があって、そこから見上げると街の中より暗い星もたくさん見える。
多分、背の高い木々が街の明かりを遮ってくれるからだろう。父によく連れて行ってもらった。
もう一つは、ライラックの私がリュウリィと育った村。
村はとても小さく、辺境にあったから、街灯なんてものはなかった。だから夜は、月と星の光、村のあちこちに置かれた幾つかの篝火が、街灯代わりだった。私は星を見たくて時々、両親が眠った頃家を抜け出し、村はずれの小さな丘へ向かった。
「でも、『流石にそれだけじゃ危ないよ!』って、リュウがランタン持って追っかけて来てたっけ…」
私はランタンに照らされた、怒ったような困ったような顔で、寝巻きのまま走って追っかけてくる彼を思い出して苦笑する。
「……」
鳴上 来の今の私。ライラックだった昔の私。
どっちも私で、その二つの出来事は、場所も世界も違うけど、確かに私の中にあるわたしの大切な記憶(おもいで)。
例え、彼がリュウリィじゃなくてもいい。
魔法が無いからきっと探すのは大変だろうけど…
「でも…絶対諦めない。私は、貴方を探し出す」
私は、背筋を伸ばしてそう宣言する。
そして…
「だって私は…、貴方に…」
「…謝らなくちゃ…、いけないから…」
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