監獄島
夏になりました
夏。それは魅惑の季節。
半袖JS、水着JS、浴衣JS……ダメだ。夏は俺を誘惑する魔の季節としか思えない。
半袖の隙間からチラチラと見え隠れJSの脇。興奮する。
穢れを知らない無垢な肢体にピッタリと張り付くスク水。発情する。
月明かりに照らされ、浴衣の後ろ姿から見えるうなじ。欲情する。
ああ、麗しのJS。本当なら今すぐにでも盗さ――撮影をしたい! だが今の俺にはそんな時間はない。なぜなら、
「終わらねええええええええ!」
JSのパンツの如し白さを誇るノートパソコンの画面を前に、俺は吠える。
現在は八月の頭。夏も真っ盛りの今日この頃。
華恋関連の騒動も落ち着いてしばらく経ったが、未だに俺の執筆の進捗具合は変わらず。
今日もノートパソコンの画面とにらめっこをしているが、アイデアは何も浮かばない。
ちなみにリビングにいるのは俺一人。普段は出入りの多い紅葉と華恋だが、夏休みに入ってからは会ってない。
紅葉は家族や友達と夏休みをエンジョイ中。
華恋は夏休みは旅館が忙しくなるため、そちらの手伝いにかかりっきりだ。
当初は誰にも邪魔されず執筆に専念できると思ったが、そもそものアイデアがないため執筆は遅々として進まず。
本来の締め切りもすでに破ってしまい、かなりマズい状況だ。下手すると、発売を延期しなければならないかもしれない。
ウチのような弱小レーベルは出版枠が少ないため、今回を逃せば次に出版できるのは早くて三ヶ月後。
そんなことになったら、俺は担当に八つ裂きにされてしまう。
まあ本当にヤバくなったら国外にでも逃げればいい。こうなることを見越してパスポートはすでに取得済みだしな。
行く国は……そうだな。ロシアンJSはもう見たし、次はイギリスのJSでも見に行くとしようか。
俺が今後の予定を考えていると、テーブルの端に置いてたスマホから曲が流れてきた。しかしそれも長くは続かず、十秒もすると収まった。
早速スマホを手に取り電源をつける。どうやら先程の着信音はメールが来たため鳴ったもののようだ。送信者は担当だ。
このタイミングでのメール。……何となく嫌な予感がするが、ここで無視するともっと面倒なことになる気がする。俺は渋々とではあるが、メールの内容を確認することにした。
『お久しぶりです、JS太郎先生。原稿の方の進み具合はどうでしょうか? 本来の締め切りもすでに過ぎています。できるだけ早めに原稿をあげてください』
「何だ、ただの催促か……ん?」
ただの原稿催促のメールかと思って一瞬安堵したが、まだ下に文が続いていた。
『話は変わりますが、我々編集部は作家の皆様の日頃の労をねぎらい、一週間後に慰安旅行を企画しています。JSもたくさん呼びますので、先生も暇があればご参加ください』
メールを読み終えると同時に俺は玄関へと駆け出していた。
俺の感じた嫌な予感というのは、どうやら気のせいだったらしい。慰安旅行、それとJSもセットで付いてくるなんて最高じゃないか!
締め切りはヤバいがそんなものはJS付きの慰安旅行の前では塵芥に等しい。
俺は玄関で靴を履きながら、今自分がすべきことを考える。旅館が一週間後なら今から準備をしないと間に合わないだろう。必要なものはしっかりと買っておかなければ!
まず最初に必要なもの。それはカメラだ。前回ロシアンJSを撮影するために三台準備したが、結局数が足りずロシアンJSの魅力を百パーセント収めることができなかった。
だが俺は同じ轍を踏む男じゃない。今度は前回の倍の数のカメラを持って行くつもりだ。もちろん容量は全て六十四ギガバイト。これだけあれば、いかなるJSの魅力も完璧に収めることができるだろう。
次に必要なものは下着だな。もちろんJSの。
もしかしたら、JSの中には下着を忘れてしまう子が出るかもしれない。そんなJSのためにも予備の下着を準備するのは必要なことだろう。……別に俺好みの下着を着けてもらいたいとか、そういった願望はない。
最後に必要なもの。これは夏という季節だからこそ役に立つ、JSの魅力を引き出してくれる最高のアイテム。つまり水着だ。
メールには海に行くとは書いてなかったが、夏の慰安旅行なのだから海が近くにある場所に行くはずだ。
だからこそ、水着は必要なはずだ。下着同様、水着を持ってこないJSだっているかもしれない。決して水着姿のJSが見たいというわけではないので、誤解しないでほしい。
「行くか……」
そして俺は家を出る。一週間後のJSとの旅行のために。
――この時の俺は、JSとの旅行という言葉に浮かれて一つ重要なことを見逃していた。
――それは旅行期間。慰安旅行だというのにメールには旅行期間が一切書かれてなかった。この点に気が付かなかったことが、後に自分を苦しめることになるとは、この時の俺は露ほども思っていなかった。
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