借物の心
思い出すのは楽しかった日々。
笑う両親の顔。髪をなでてくれるナルエタ。
そして、やさしく揺らぐ水の音。
続けて思い出すのは、事件があったあの日。
雨の日。夜のリビング。
雷に照らされて映し出される、血まみれで倒れた両親に、呆然と立ち尽くすナルエタ。
――否。
もう一人いた。倒れ込んだ両親の下に、もう一人。
金髪の――。
◆◆◆
『――ぁ。――そう。――とりあえず』
『それらしい資料は見つけ――』
『とにかく、まずは迎えを――』
話し声が聞こえる。
リブライラの意識は、それらによって浮上した。
目を開けて最初に飛び込んできたのは、赤色の髪の毛だった。
どうやら自分はイヴにおぶられているらしかった。
彼女の背中に身を預ける形になっている。
「ここは……?」
そっと後ろから声をかける。
「やっと起きたわね」
歩きながらイヴが言う。
視界の端で、彼が何かをポケットにしまうのが見えた。
「具合は?」
「具合……」
記憶をたどる。
そうだ、自分はイヴと一緒に、地下の研究施設にやってきていて、それでその中で巨大な水槽を見つけて、その中に――。
「大、丈夫……」
「その様子じゃ、あんまり大丈夫じゃなさそうね」
フフン、とイヴが鼻で笑い、おぶったままで歩き続ける。
「とりあえずもうすぐ出口だから。休憩は外に出てからにするわよ」
ちらと前を見る。
長く続く階段の果てに、また梯子が見えた。
◆◆◆
「はい」
梯子を上り切ったイヴに、上から手を差し伸べられる。
外に続いているであろう梯子まで、結局リブライラはおぶられたままだった。
そして今は、梯子を上り切り一足早く外に出たイヴに、上から手を差し伸べられている状態だった。
薄暗い地下施設の一筋の光が差し込む。
リブライラは黙ってイヴの手を取り、暗闇を後にした。
梯子を上り切り、外に出て周囲を見渡す。
何かの建物の跡だろうか。
天井は崩れ落ちてすでに無く、壁の一部や、草木に浸食された床だけがあった。
「どうにか外には出れたけど……」
外に出たイヴが辺りを見わたす。
「……どこよ、ここ」
「さぁ。でも見た感じ、変わらずあの島に居るっぽいな」
遠くにある記録城を見て、リブライラは言った。
「なるほど。どーりで……」
イヴの視線が壁に向けられる。
ザリ、と砂がすれる音を聞いた。
まだ比較的残っていた壁の向こうに、樹で出来た腕が見えた。
「見覚えのある、お手てがあると思ったのよ」
「あいつら……!」
樹の化け物。自分をずっと付け狙ってきた化け物が、そこに居た。
慌てて、もう一度周囲を見渡せば、いつの間に集まって来たのか、化け物たちに四方を囲まれていた。
「ったく、いい加減しつこい連中ね」
リブライラを庇うように、一歩イヴが前に出て、刀を抜く。
化け物たちが姿勢を低くしたかに見えた。
今に襲い掛かってくると、身構えたリブライラだったが、その予想は外れることになる。
化け物の一匹の頭だけが、壁から突き出て来たのである。
誰かに後ろから思い切り、打ち抜かれたように。
化け物たちの視線が自分たちから逸れる。
それが合図だった。
自分たちを取り囲む化け物たちが、その壁の向こうに殺到する。
何かが叩きつけられる音と、化け物たちの断末魔が数度響き渡る。
そして、最後は鈍い音と共に壁が崩れ落ちた。
壁の向こうには化け物たちの死体が転がっていて、その中心に見知った顔が立っていた。
疲弊しているのか、その人物は肩で息をしていた。
よく見ればメイド服も所々破けていて、鉄の肌も削れて中の線が見えていた。
「ナルエタ!」
気が付けばリブライラは、イヴの制止も振り切ってその人物の元へと駆けだしていた。
「大丈夫⁉ 怪我……はしてる、か。えっと、でも、どうして、ここが……」
「ワタクシのことは結構です……それよりも」
ナルエタを支えようと手をさし伸ばそうとして――。
「リブライラ!」
と、不意に背後からイヴの叫び声が耳に届いた。
それの意味する所を理解する前に、目の前に何かが飛び上がるのを見た。
それは腕だった。
青と白のローブに覆われた細くて白い腕が、鮮血をまき散らしながら宙を舞っている。
――自分の腕だった。
左腕に強い熱を感じて、そちらを見る。
白いローブが今は赤に染まり、そして肩から先は無かったのである。
『え』という一言を漏らす前に、腹部に違和感を覚えて見やる。
見れば、腹には地中から突如として生えた、樹のようなものが突き刺さっていた。
体から血液が漏れ出ていく。熱は失せ、感覚は鈍り、視界は一瞬でぼやけた。
膝から力抜けて、その場に倒れ、ナルエタに抱き止められる。
薄れゆく意識の中。
彼女の肩越しに、その先にあのフードの誰かを見た。
◆◆◆
――先に仕留めなければならない。
リブライラの体が樹々に貫かれ、引き裂かれる様を見たイヴは、すぐさま走り出していた。リブライラを抱きとめるナルエタの横をさっと抜けて、その後ろに居るフードの人物へと駆ける。
フードの人物を守るように化け物が立ちはだかる。
イヴはそれを刀で斬り刻みながら、ただひたすらにフードの人物に向かって駆ける。
――間違いない。
化け物たちを切り伏せながら、イヴは静かに確信していた。
化け物たちを操って、何かを企んでいるのは、コイツだ。
そして、狙いは察するにリブライラか。
「ッ……!」
頬を木の根がかすめていく。
それは地中から槍のように生え、明確な殺意を持って生えていた。
リブライラを攻撃したものと同じものだ。
フードの人物を護衛する化け物たち攻撃の隙間を埋めるように、地中から木の槍が突き出される。
切り伏せ、避けつつ、しかしそれが精いっぱいだった。
たまらずその場で、大きく飛び下がる。
「――フン、随分と臆病じゃないのよ」
視線を上げた時、すでにそこにはフードの人物の姿が無かった。
辺りにはまばらに残る化け物たちが、牽制のために距離を取りながら、周囲を回っていた。
フードの奥の顔。
ちらりとではあるが見えたソレを、静かに思い返す。
未だ推測の域は出ないが、しかし、アレは確かに――自分の知っている顔だった。
「そろそろ鬼ごっこも飽きたわね」
イヴが刀を鞘に納めた。
――と同時に、化け物たちがイヴへと飛びかかった。
そして、銃声が辺りに響いたのもまた、それと同時だった。
化け物たちが倒れる。
イヴがちらと視線だけを空中に投げる。
そこにあったのは『ピクシー』だった。
昨日、リブライラが新たな記録として発表していた発明品。飛行機能を備えた超小型の無人機。今はそれに、銃のような武器が取り付けられ、複数機で編隊を組んで、自分たちの頭上で化け物たちに銃口を向けている。
「ノーレッジ。敵は森に逃げた。一応追ってくれる?」
取り出した無線機で、ピクシーを操縦するノーレッジにイヴは指示を出した。
『了解。望み薄だけど、調べてみるよ』
ピクシーたちが森の中に入っていくのを確認して、背後のリブライラに視線を向ける。
負傷したリブライラが、仰向けになるようにナルエタに抱きかかえられていた。
「止血はもう終わった? なら、船を泊めてあるから、それで病院に――」
「いえ、その必要はないのです」
「は?」
ナルエタの予想外の返答に、イヴが驚きの声を漏らす。
原因が分からず、彼女の視線の先に答えを求め――すぐにそれは分かった。
リブライラはフードの人物の攻撃によって、すでに血まみれだった。
彼は確かに左腕を斬られたはずで、その斬られた腕はすぐそばに転がっている。
今すぐにでも止血をしなければならないはずだった。
だというのに、しかし彼の腕からは血はもう出ていなかった。
そればかりか『新しい腕』が生え始めていたのだ。
「なに、これ……」
そう呟いたのはリブライラ本人だった。
うつろな瞳で彼は、自分の腕をしばし見つめて、やがて力尽きたように目を閉じた。
◆◆◆
胸騒ぎ。
そんな機能は自分にはない。
だというのに、その日は何となくそんな気がして、だからラケルスとダイアの家へと駆けたのだ。
原因は些細なことだ。
数日前。2人が自分の娘を蝕む病の治療法を確立したと噂で聞き、事の真偽を確かめようと連絡をしたが、それがつかなかった。たったそれだけの話だった。
けれども、そんな些細なそれだけでも、自分の足をこうして走らせるのには十分だった。
こんな感覚はいつ以来だろうか。
ホーエンハイムを戦争で失った、あの日の夜くらいだろうか。
その日。
ナルエタは雨の中を傘もささずに、夜のトワリスを駆けていた。
ずぶ濡れになりながらも、2人の家に着いた。
彼女の家は都市の外れにあった。ラケルスは統治者であるため、本来であれば都市中央にある『記録城』に居を構えるべきなのだが、娘のことを気遣ってか、静かなこの場所に住み続けた。また、それ以外にも妻のダイアが墓守をしており、彼女が管理する霊園が近いことも、原因の一つではあったのだろう。
二階建ての巨大な屋敷が、遠目に見えた。すでに夜というのに、窓に明かりはついておらず、それがナルエタを余計に不安にさせる。
さらに、近づいてみれば、玄関の扉は無造作にも開かれて、そのままだった。
――嫌な予感が当たったのだ。
急いで屋敷の中に入り込む。
「ラケルス様! ダイア様!」
二人の名を呼び、玄関から入って廊下を進む。
突き当りにあるリビングの扉は開かれていた。
中に入ると、そこには三人の人間が倒れていた。
声は出なかった。
二人がしていた治療法というものが、どういったものか見当はついていた。自分はトワリスの、いうなれば後見人のようなものだが、そんな自分の耳に二人が考えた治療法についての情報は入ってこなかった。
というより、隠されていたのだ。それが禁忌項目に触れる類の、治療法だったがゆえに。
――そして、そうした禁忌を求めた者の末路というのは、往々にして暗いものなのだ。
物言わぬ骸となったラケルスとダイアと、リブライラを見やる。
三人の体には、何か爪のようなもので切り裂かれた跡があった。何か化け物のようなものに襲われたのか。
だが、それよりもだ。
ナルエタは『ソレ』に近づきながら、拳を握りしめた。
三人のすぐ側に立つフードをかぶった人物。
顔は見えないが、体つきからして男だろうか。
ともかく、そいつは部外者だった。
「アナタがやったのですか」
フードの男に言う。
しかしフードの男はこちらを見ない。見ないままに、ぽつりとつぶやく。
「収穫だ」
それは老人声だった。
そして、ナルエタは、その声に聞き覚えがあった。
――否、声ではなく、語り方に、だ。やさしく、理解させるような、その喋り方を、自分は知っているらしかった。
「ナルエタ……?」
不意に声がした。
驚いて声がしたほうを見ると、そこには一人の少年がいた。
その少年の姿を見て、ナルエタは悟った。
ラケルスとダイアが言う所の『治療』とやらは、すでに済んでいたのだ。
そして、フードの老人が言う収穫とは、彼の事なのだ。
◆◆◆
視界が戻る。過去の記録がノイズ交じりで再生されていた気がするが、おそらく直近で接触した、あの化け物たちのせいだろう。
見覚えのある天井の下で、ナルエタは目を覚ました。
体を起こして辺りを見わたす。
どうやらここは、記録城の一室らしかった。
ベッド眠っていたのか、体を起き上がらせる。
各種機能の確認をするが、破損していた箇所は自己修復機能によって、ある程度回復しているようだ。
ベッドから降りて部屋を出る。
廊下の窓からは昼の光が差し込んでいた。
「ナルエタ様」
部屋の外で見張っていた都市の衛兵に声を掛けられる。
「もう起きられたのですね。お体の具合は大丈夫ですか」
「えぇ、もう大丈夫です」
「さようですか。では、ロックウッド様がお待ちですので、第一研究室までお越しいただけますでしょうか」
「ロックウッド様が――?」
なぜ、と聞こうとして、自分が倒れるまでの記憶を思い返す。
リブライラだ。
「わかりました」
「ご案内を――」
「いえ、大丈夫です」
衛兵の親切を片手で断ってナルエタは一人歩き始めた。
◆◆◆
ノーレッジは特に他意もなく、目の前に鎮座する巨大な培養管にそっと手を触れた。
天井に着くほどの大きさのソレは特殊な液体で満たされていて、中には一人の少年が力なく漂っていた。
この都市の統治者、リブライラ、と呼ばれる少年だ。
だぼだぼの白いシャツに、同じ色の長ズボンに身を包んだ少年が、クラゲのようにたゆたっている。
そこは研究室だった。巨大な培養管が一つと、それを管理する機材がいくつかあるだけの、中規模程度の部屋だった。
何の研究するのかは、この培養管の中身が物語っている。
「あんま良い趣味とは言えないわよね」
「――うん」
横に立つイヴの言葉に、ノーレッジは静かに頷いた。
イヴ達をピクシーで助け出し、もともとイヴを回収する予定だった船で、そのままここに運び込んだのは、ノーレッジだった。
今は成り行きで、こうしてリブライラが運び込まれた研究室に居るわけである。
この研究室での待機は、ロックウッドという現在トワリスの外交担当の指示だった。
「――どんな傷を負っても自己再生する体」
背後から声を掛けられる。
二人が振り返ると、そこにいたのは人のよさそうな顔をした中年男性だった。
頭に叩き込んだトワリスの資料を引っ張り出す。たしか、この男は現在の都市の外交担当者――ロックウッドだったか。
「それが彼の『能力』だ」
「――ポジティブに言うじゃない」
「生きねばならぬなら、そうして騙すしかないんだよ」
「……それも正しいわね」
「キミたちには恩がある。何かしらで返したいと思うんだが……」
「だったら」
とイヴの視線が、リブライラに向けられる。
「コイツのこと、詳しく教えなさいよ」
イヴが親指でリブライラを指し示す。
と、その様子を見ていたノーレッジはある違和感を覚えた。
それはイヴの手首の包帯だった。以前は、手首に巻かれていた程度だったが、よく見れば今はその範囲が少し広がっている。
理由が思いつかず、ただその謎だけが頭に残る。
「その件については、ワタクシのほうから説明させていただきます」
部屋の中に声が響く。
見れば、開かれた扉にはナルエタが立っていた。
◆◆◆
衛兵に言われた第一研究室に入ると、すでにそこには全員が居た。
ロックとイヴ、そしてノーレッジと名乗る少年。
それらの視線が一斉に自分に刺さるが、ナルエタは気に留めず、ただそこにある培養管へと目を向けた。
特殊な液で満たされたソレの中には、リブライラが浮いている。
視線をそちらに向ければ、貫かれた腹部の傷も、切断された腕も、すでに元に戻っていた。
リブライラの無事を確認してから、イヴたちに向き直る。
「――ご主人様は生まれつき体が弱く、病に侵されていました。二十歳を迎えられるかどうかも怪しいほど」
「けど、それをソイツの両親が『賢者の石』を使って治した」
ノーレッジが挟んだ。
「で、その治療によって、コイツは人を超えた……。そんなところ?」
言葉は選ばれたのだろうと、ナルエタは目の前の少年を見て思った。
彼は優しい人間だ。――だが、物語もうそうだとは限らない。
「違います」
だからナルエタは、しっかりと否定した。
「病気は治らなかったのです」
ナルエタの言葉に、部屋は静寂に包まれた。
「――コピー、か」
それを破ったのは、いつの間にか培養管の前に立っていたイヴだった。
彼女はぼんやりと、中に浮かぶリブライラを眺めていた。
「病は治らず、ご主人様は亡くなられました。そこに居られるのは、ご主人様の全てをコピーした、賢者の石によって生み出された不老不死のホムンクルスなのです」
そこにいる彼は、立って動いてもどう見ても、リブライラにしか見えないのだが。
「本物は、すでに亡くなられているのです」
しかし、彼自身ではないのだ。
ナルエタは、自分の中で遠ざけていた事実を告げる。
半ば怒りを露にして、ノーレッジが口を開く。
「どういう事だよ。彼の両親は、なぜ自分の息子のコピーを……?」
「事情は分かりません。賢者の石は禁忌扱いされていて、ご主人様の両親は、ワタクシにも隠して研究をされていましたので……。本当はご本人を治したかったが、それが叶わなかったからなのか。あるいは、最初からそうだったのかは分かりません。――すでに故人。消去法でそれらしい解には辿りつけますが、ワタクシのほうからは何とも……」
本当は、体だけを用意して、脳を入れ替えたかったとか。
そうした狙いがあったのかもしれない。
けれど、今となっては分からない。死者の思いや考えなど、知る術は無いのだ。
「ところで」
イヴが口を開いた。
「その『賢者の石』ってやつは、どこにあんのよ。――いや、というか、コイツの両親は、それをどうやって手に入れたのよ」
すっと、イヴの視線がこちらを射貫いた。
それは問いかけではなかった。確認だった。
おそらくは、彼女も賢者の石の出所に、おおよその見当をつけているのだろう。
さて、どう返したものかとナルエタが思案した、その時だった。
乾いた発砲音が耳に届いた。続いて人の悲鳴に、あわただしく鳴り響く足音。
「ロックウッド様!」
ノックもなく、駆け込んできた衛兵が叫んだ。
「敵襲です! 正体不明の化け物たちが……!」
ロックウッドと目が合う。
おそらくは、あの樹の化け物共、そしてフードの男。
ロックウッドが衛兵に了解したと返事をして、それからこちらを向く。
「ナルエタ、悪いが迎撃を――」
言葉は途中で遮られた。
遮ったのは、何かが割れる音だった。
いや『何か』ではないのだ。この部屋で、そんな音を出すものといったら一つしかないのだから。
果たして、培養管は割れ、中の液体が部屋の床にこぼれた。
そして――リブライラと名乗っていた少年が、着地した。
長い金の髪も今は濡れて顔に所々張り付き、その身を包む衣服もまた、水で彼の体に張り付いていた。
濡れた髪の奥の瞳が、こちらを見ていた。
それは憎悪の色。怒りの色だった。
「――ふざけんなよ」
少年は、悲しい声でそう言った。
直後、激しい揺れが部屋を襲った。
嗅覚センサーが火災による煙を探知する。
おそらく、樹の化け物たちの攻撃によって、どこかで火災が発生してしまったのだろう。
その逡巡は一瞬であったが、リブライラにとっては十分な時間だった。
「なっ……⁉」
倒れ込むような姿勢から、リブライラが唐突に走り出す。捕まえようとナルエタが手を伸ばしたが、それは空を切っただけだった。
ナルエタの横をすり抜けたリブライラは、そのまま尋常ではない速度で部屋の外へと飛び出していく。それはもはや人の出せる速度ではなかった。
慌てて、自分も外に出るがすでにリブライラの背中は遠く小さく見えるばかりだった。
賢者の石によって作られたホムンクルスとしての能力が、開放されたのだ。
『リブライラ』と『記録城』。
ナルエタの中で二つの使命がぶつかり合う。
「行きなさい! 今、アイツに必要なのはアンタよ!」
思考を止めたのはイヴの声だった。
すでに彼女は刀を抜いていた。
「感謝します……!」
その一言を残し、ナルエタは最高速度で走り出した。
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