チャイナドレスの少女

その子の視線は、僕が走り終わった後も外れる事なく一点に僕を見つめていた。


しかし僕は、そんな事よりも何故あの少女は、チャイナドレスを着て公園のベンチに座っているのか気になって仕方がなかった。


この奇妙な空気が流れていたのを断ち切ったのは、チャイナドレスを着た少女の言葉だった。


「お兄さん、もしかして吉岡秀太さんですか?」


「えっ、そうだけど」


反射的に少女の言葉に対して反応してしまった。

すると、安堵した表情で


「よかったー!お兄さんを迎えに行く予定だったんですが、道に迷っちゃったから困ってたんです!…運が良かったー!」


いきなり過ぎて中々、頭の整理がつかない。

見ず知らずのチャイナドレスを着た、楓ちゃんと同じくらいの歳の少女にあんな風に声をかけられたら、誰だってびっくりもするだろう。


そんな事を思っていたら急に思い出した様に


「あ!自己紹介忘れてました!新井渚ししょーの弟子の韋紅花イ ホンファっていいます!言いにくいとおもうので、気軽に‘’こうか‘’と呼んでください!今日は、お兄さんがししょーと会う前に、少しお話ししたいなと思って探してたんです。まー、結局迷って困ってたら、丁度お兄さんらしき人がいたので声をかけてみたんです!そしたら大正解!本当に運が良かったですー。」


軽いノリで話す言葉一つ一つに更に頭が混乱しそうになったが、少女の言葉を聞いて、検討がついたことがある。

ほぼ間違いないだろうが、本当がどうか確かめてみることにした


「もしかして、渚さんと一緒に中国で暮らしてる女の子って君のことなの?」


「えっ!知ってたんですか?びっくりです!そーですね。ししょーには一緒に暮らしながら毎日走りについて教えてもらっています!」


やはり、伊藤さんが言っていた渚さんが楓ちゃんを日本に置いてまで、中国で一緒に暮らしている少女というのはこの子で間違いない様だった。



「あのーお兄さん!…ししょーに会うまでの時間お話ししてもらえませんか?」


決して僕はロリコンではない。これだけは間違い無いはずなのだが、あのあどけない少女の強請る様な表情には断れるはずはない。断る理由もないのだけれど。



しかし、僕はこの子に出会ってから一貫して気になっている事が一つあった。


「まだ少し時間もあるし、少し話そうか。」


「やったー!!ありがとうございます!」


「でもその前にこれだけは、聞いておきたいんだけどいいかな?」


「?なんですかお兄さん!私なんでも答えちゃいますよ!」




僕は、迷いなくこうかに聞いた。

「なんでチャイナドレス?」

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