第9話 罪と罰(2)
「次はサファイア。君だ」
「ちょちょちょちょ待ってよ!やだやだ!助けてください隊長!」
太郎にすがりつこうとするがキャストライトの方が早い。
サファイアの腕をつかみ、あっという間に抱えてしまった。
「お願い!もうしない!すぐ片付けるから許して!」
「今さら遅い。自分のしたことに責任を持ちたまえ」
暴れるサファイアのローブを無理やりめくり、お尻を出す。
水色のダイヤ模様が可愛らしいパンツ。
キャストライトはそのパンツごと彼女のお尻を叩いた。
「痛い!痛いよ!隊長!助けてください!たいちょおおお!」
ぱちん という音に合わせてリズミカルに揺れる彼女のお尻。
上向きにぷりんとしたお尻が魅力的だ、なんて他人事だからこそ太郎は思った。
先ほどと同じく十回叩き
「終わったよ。これに懲りたら節度ある生活を心がけるように」
「ぅぐっ、ひっく……痛いよお……」
解放されたサファイアは、レッドスピネルと並んで尻を抑え床に倒れこみ
「たいちょお、見てください……私のお尻、消し飛んでませんか……?」
涙ながらに太郎に語り掛ける。
「へへ、見せてごらん」
恐怖心など消え失せた太郎がサファイアに手を伸ばす。
が、その手はキャストライトに掴まれた。
「そんな暇はない。最後は君の番だよ」
太郎に向けて自分の膝を叩く。
キャストライトの笑顔がこんなにも恐ろしかったとは。
彼女の手を振りほどこうとするが、びくともしない。
それでもわずかな希望にすがり、太郎は言い募る。
「あの二人で十分だろ!俺は……俺はやってない!あいつらがこんなにちらかしたんだ!」
「ウソついちゃダメですよ!むしろ一番散らかしてたじゃないですか!」
「だ、そうだが?」
「サファイアお前!違う、あいつが嘘ついて」
お尻を抑えて恨めしそうな顔のサファイア。
まさかの裏切りに動揺する太郎だが、その隙をつかれた。
「見苦しい。言い訳なら後で聞こう」
ぐいっと引き寄せられ、気づけばキャストライトの膝の上。
手際よく太郎のズボンを脱がそうとする。
こんなに細い腕なのに、宝兵というのは恐ろしい。
太郎の抵抗など全く意に介さず、あれよあれよという間にお尻が丸出しになった。
「俺は隊長だぞ!キャストライト!隊長命令だ!やめろ!」
「私の使命は隊長を正しい道へと導くこと。たとえ命令に背くことになったとしても、私はその使命を果たすよ」
言って、キャストライトは手を振り上げ
「ぐあっ!ああ!があっ!」
躊躇いなく、太郎のお尻を十回叩ききった。
見ているのはあっという間だったのに、いざ自分が叩かれると数十分のように感じられた。
「隊長の座に恥じない行いを心がけるように」
ようやく解放され、太郎もサファイア達と共に床へ転がる。
「くそ、なんで俺がこんな目に……」
太郎の穿いていた白ブリーフは三人の中で一番防御力の高いパンツだろうに、お尻は痺れて痛いのと熱いのとでわけがわからなくなっていた。
芋虫のように転がる三人を横目に、キャストライトはため息をつく。
と、玄関の扉が開く音がし、リビングへ足音がやって来る。
「ただいま帰りました。……みなさんどうしたんですか?」
ルーペが怪訝そうに首をかしげた。
「活を入れていたところだよ」
キャストライトは立ち上がり、何度目かわからないため息をついて
「さ、片付けようか。もちろん君たちもだよ」
三人の芋虫に言った。
● ● ●
ようやく片付けが終わり、太郎はソファに座った。
といってもまだお尻が痛いので、体を横に崩して肘置きにもたれかかるような態勢になっている。
サファイア達もお尻の調子は同じらしく、似たような態勢でくつろいでいた。
「お疲れ様。よく頑張った」
労いの言葉と共に、紅茶とクッキーを出すキャストライト。
こんな物で尻の痛みは忘れられない。
太郎は彼女を睨みつけて、クッキーを頬張った。
「やっぱりキャストライトがいないとダメだね」
対して、先ほどの屈辱など忘れたのか、サファイアは能天気にそう言ってのけた。
「それは困るな。私がいなくてもきちんとした生活を送ってくれないと。おちおち警備にも行けないじゃないか」
「せめてもう一人、シャキッとした奴がいればなあ」
レッドスピネルが紅茶をすすりながら言った。
「隊長。宝兵を増やすってのはどうだ」
「自分で節制する気はないのかい?」
じろりと睨むキャストライトに、レッドスピネルは肩をすくめてみせる。
「もちろん努力するさ。けど、一朝一夕でなれる訳じゃねえ。それまでの間サポートして欲しいだけだ」
「それでしたら、‘発掘’などはいかがでしょう?」
ルーペが太郎の隣に座り、口を開く。
「主に装飾品となる石をとりに行くものですが、稀に太陽の光や月の光、そして宝兵の原石がとれます。領土内の山で行うので敵も出ず、負傷することなく行えますよ」
「えー……もうそんな体力残ってねえよ」
「ご安心を。発掘は宝兵のみで行います」
太郎の不満は即座に解消された。
「だったらアリだな。もっと優しくて気の利く宝兵が欲しい」
「それは私への嫌味かな?」
睨むキャストライトをなだめるように、レッドスピネルが
「まあまあ。けど、キャストライトにとっても悪い話じゃないだろ?人手が増えるってのはそれだけ各自の負担が減る。警備然り、家事然り」
「……確かにそうだね。人手は欲しいと思っていたところだけど」
納得いかない様子だったが、それでもキャストライトは頷いた。
その言葉にサファイアが嬉しそうに両手を挙げる。
「決まりですね!私、新しい仲間を探してきます!」
「ああ。いい石見つけて来いよ」
残っていたクッキーを口に入れ、太郎はそう言った。
● ● ●
翌日。
流石にお尻を腫らせて発掘には行けないと、一晩休んで行くことになった。
玄関に立つのはサファイアとキャストライト。
サファイアは単純に発掘へ行ってみたいと言い、キャストライトは「きちんとした宝兵かどうか、自分の目で見極めたいからね。私が行くよ」と言ったための人選だ。
「じゃあ、行ってきます!」
「期待して待っててくれ」
そう言い残し鉱床を出る。
残された太郎達は手を振り見送った。
「……さて、鬼の居ぬ間に」
「市場に出かけましょう!」
懲りずにだらけようとする太郎だったが、ルーペに行く手を阻まれる。
「はあ?なんでだよ。面倒くせえ」
昨日、体を酷使したばかりだ。
今日はたっぷり休養を取る必要がある。
太郎はルーペを押しのけてリビングへ行こうとするが、負けじと彼女が踏ん張った。
「食材を買うようキャストライトに頼まれたんです」
「ふざけんな。あいつにさせればいいだろ」
「発掘に行くのでできません。それに、本来であれば備蓄していた食糧でやりすごせたのに、それを全部食べてしまったのは隊長殿ではありませんか」
ぐうの音も出ない正論。
太郎は苦し紛れに、隣に立っているレッドスピネルを巻き込むことにする。
「俺だけじゃない。レッドスピネルもだ」
「すまん。スピちゃんも付き合うよ。市場に行こうぜ」
悪手だった。
ルーペとレッドスピネルが、太郎の両腕にそれぞれ自身の腕を絡め
「よかったですね。では行きましょう」
そのまま、リビングとは真逆の――玄関に向かって進んで行った。
● ● ●
市場にはテント式の簡易な店が多く並んでいた。
果物から装飾品、なかには原石を置いている店もある。
太郎はそのうちの一つを手に取って
「これ買えばいいんじゃないのか」
「駄目です。いまキャストライト達が発掘に行っているじゃないですか。彼女たちが原石を持って帰ればタダで手に入るんですよ」
ルーペに言われ、しぶしぶ元に戻す。
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