珠玉の雨

稀に思う

雨が宝石だとよいのに、と

石になってしまうから

傘は役に立たないし

家から一歩も出られないけれど

上から降ってくる宝石は

いや、地に落ちた宝石は

綺麗だ

止むころには陽が差して

地面に落ちた宝石たちを輝かせてくれる

それは雪が降ったあとの銀面世界の煌めきに似ているはずで

白もいいが彩りどりの宝石が足元にあるのも

幻想的で良いではないか、と

いっそのこと溢れ降るものは宝石にならないか

きっと恐ろしいことさえも忘れたかのように

美しい、とだけ呟ける

内面の恐怖に打ち消すことができるはずだと

思いながら

ただただ地面に転がる価値あるものを見たいだけだ

無造作に、簡単に、手軽に、綺麗、と思いたい

そんな雨が欲しかった

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自由散文詩掌編『雨』 朶骸なくす @sagamisayrow

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