赤い雨
小さい頃のお話です
雨はお空が泣いているという話と
神様が泣いているという話を
同時に知りました
お空には雲が浮いているし、雲が泣いていると思いましたし
雲の上にいるだろう神様が何か悲しいことがあって泣いていると思っていました
別に、どちらのお話でもよかったのです
お気に入りの黄色い傘が差せるし、お揃いの黄色い雨合羽、長靴
濡れてもいい服、大きい水溜まり
それだけが楽しみでした
雲が生きていようが、神様が女々しくしてようが
ざあざあ降って、ぴちゃんぴちゃんと晴れ間が出来て
「お出かけするよ」と言われれば
どうでもよかったし、もっと悲しくなればいいとも思っていました
でも実際、生きてきて悲しい時に泣くというのは難しく
やるせなさと不甲斐なさ、悔しさで泣くことが多いと知りました
自由気ままに生きて創作物で泣くのと社会の歯車ではまれない悲しさ
雲は機能、神様は仮想、世界の雨は自然でしかなく
一生、味方にはなってくれない
悲しい時に泣いてはくれないし、むしろ吹雪になり、晴れになり
「だから、なんだ」と世界は言って、人の優しさなど雨より酷い人災の方が何倍も多く
道行く人、そう項垂れた人、赤ん坊を抱えている人、死にそうな孤独の老人、仲良く手を繋ぐ恋人同士、人生の生きがいとも言えるだろうペットの散歩、それに難癖をつける声の大きな老害
雨は槍にならないだろうか、そうしたら私は家に籠り、くすくすと傘を貫き、人が死ぬ想像をしては満たされる。それが私の「幸せ」になってしまった。私は人災になってしまったのです
だから泣かない。もうお気に入りの傘も雨合羽も長靴もいらない
雨に打たれて、撃たれて、打たれて、神様よ、雲よ、存分にお泣きなさい
きっと貴方達は我関せずと高見の見物をするのだから
死は天国でも地獄でも救済でも天罰でも構わない
雨よ、私の代わりに泣いてくれますか? これからすることに泣く慈悲をお持ちですか?
そんなことはないでしょう。だって意識が貴方達にあるならば私を殺してはくれませんか?
……さあ、競争をいたしましょう。どれだけ天災と人災が、死を、死を、我が死を調停するのか
まずは臆病者ですので建物を壊しましょう。爆発する瞬間の火の粉は花のよう、泣き叫ぶ救いを求める声は音楽のよう、私は
虚無を齎して皆殺しにするもの、ああ、神様、天上の生きとしいけるもの
世界を調停するものたちよ、私は笑っていますので、どうぞ
私の雨は常に降っております。私は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます