第24話チビットの村
チーの残念そうな顔を見るのはいたたまれない気がする、まるで小さい子どもが楽しみにしていた遠足が当日大雨になってしまって中止になったように悲しそうな表情。
そういう時は別の何か楽しい事をしてあげたくなる。
「とりあえず入ってみない? 村の前で野宿はないでしょ」
「でしょ」
双子のペペとププが自分達を忘れては困るとわざわざ手をあげて発言した。
その瞬間、風が急に吹くようにその風と一緒に何か音が聞こえてきた。
いや、音だけでなく歌がなにやら聞こえてくる。
『あぁぁ、つきのぉ明かりよぉ、ふんならまぃい』
盆踊りのような謎の歌。
それでも俺達はペツとガラハットの言葉を飲み込んでその村に入っていった。
だが急に肩を捕まれた俺。
「入るのだったらこれをつけた方がいいよ、お姉ちゃんが作ってたの」
そのほっそりとした指の間にウサミミのカチューシャが握られていた。
ガラハットの趣味で俺は
俺と三人はしぶしぶとそれをつける。
俺のザビエル似の頭にウサミミが取りつかれる。
「ここはチビットの村、チビットこそ高貴な種族。
それ以外はこの村で楽園を求めるのは無理である」
嫌な予感がする。
それを察したのかガラハットは悲しそうな目を俺に向けた。
雨に濡れた子犬の目だ。
やはりここはガラハットの言うことを聞いた方がよかったかも。
するとさっきまで焚き火の周りを踊っていた、チビットがこちらに気付き笑顔でやってきた。
コアラのマーチの絵柄みたいにいろいろなチビットがいた。
「チビットの同士、暖かく歓迎します」
そのチビット達はガラハットのウサミミの出来映えのよさに俺達を本物のチビットだと思い歓迎の舞なのか何故か踊りながら村の中に連れていく。
だが実際にはチビットはチーだけなのでもしバレてしまったらどうしようかと震える一方であった。
お祭りはやぐらのような物が広場の真ん中にあり、顎ヒゲを伸ばしたじいさんチビットが何かわめいていた。
ハリーなんとかのパーセルタング《蛇語》みたいな響きである。
「あぁチビットはぁ月の民ぃ、我々チビットが一番偉い」
随分ナルシストな歌だと思っていたがチーが笑顔で踊りまくってたのでよかったのかもしれない。
やはりペツは気に入らない。
ペツぐらいの年齢(二十代前半)チビットがぽわぽわした感じペツの腕に自分の腕をカツレツのタレのように絡ませてにっこり笑い。
「踊りませんか?」
とガラハットにも負けぬお山をくっつけてペツは真っ赤になっていた。
「もうそろそろ帰ろう」
ガラハットがそういうと俺は
「まぁもう少しいてもいいと思うよ、もしかしたらここに楽しく住んでみたらどうかな?」
そしたら風の騎士が驚いて俺に問いかけた。
「ラン君なんで旅を続けているのか知らないの?」
そういえばなんで旅してるんだろう? 旅が俺を呼んでるからかな?
「
えっ!? 俺そんな事全然思ってなかったけど。
「ラン君がゴブリンにやられたのも奴隷になってしまったのもそしてお友達のチーちゃんが人を殺めてしまったのもラン君が不幸を呼び寄せているからよ、その力を幸福にかえる為に私たち旅してるのよ、小さい時からお姉ちゃん弟のそういう体質が可哀想だったから風の試練を受けて風の騎士になったんじゃない」
ファーストイヤー《初耳》だ。
そもそも俺はこの人の弟ではないのだが。
「不幸でやられる前に私が守るから騎士になった、現にゴブリンで死にそうになったでしょ」
そうか。
「それを月から太陽、陰から陽にするためにはエレメンツナイトになるしかないのよ、それになるには四大神の元に行き試練を乗り越えるしかないの」
お母さんに怒られるような感じ俺はうつむいた。
ウサミミで。
異世界生活もう嫌だ 星ぶどう @kakuyom5679
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