第21話大罪
チーが向かった場所にたどり着くと彼女の前にはきりたった大きな崖があり、一歩踏み越えれば小さいチビットは落下してぐしゃぐしゃになってしまうであろう。
首をうなだれ俺達に気づいたチーはこちらに顔を向ける、目を腫らしていた。
たくさん泣いたのが分かる。
「もう私なんて生きてちゃいけないのよ、あの子達のお父さんを殺しちゃったんだもの」
俺はついに靴が脱げるのを無視して彼女を捕まえようとしたが彼女は崖の下にヒュッと消えて見えなくなってしまった。
間に合わなかった。
そう思った瞬間、崖の下から猛烈な風が吹き上げ砂ぼこりと一緒にチーの身体を上空に飛ばして草の上にドサリと降ろした。
人形のように動かないチー。
「気絶しただけだから大丈夫」
後ろから走ってやってきたのはガラハットだった。
抜き身の剣を持ったままこちらに向かってくる。
その剣身には先ほど放った微弱な風が残っている。
彼女は倒れたチーの後頭部を優しく持ち上げて腰にぶら下げてある水筒の蓋を開ける。
少し雑だがチーの唇を濡らしていく。
ほんの少しそれを繰り返していると目を覚ますチー。
まさに瀕死のウサギのようであった。
彼女は辺りを見回して自分が助けられた事を察したのか大声で鳴き声をあげた。
「なんで助けたの? 私なんか死んだ方が良かったのに!」
風の騎士はぎゅっと大きな胸にチーを埋めて「大丈夫、大丈夫」と頭を撫でてあげてささやいた。
「大丈夫なもんかい!!」
俺はいつもピーツーと呼んでいたペツを見た。
一瞬耳を疑った、聞き違いではないだろうかと。
その言葉を言い放ったあと、さらに彼は続ける。
「自分が死ねば罪がチャラになるなんて甘ったれるのもいい加減にしろ! 後に残したあの家族に償いをせずに逃げようってのかい?」
それはそうだが、今はチーを優しく見守ってやろう。
その時、ドヤドヤと何千人もの靴の音が響き渡ったと思うとたくさんの人々が農具をぎらつかせ俺達を取り囲んだ。
町にいた処刑人の姿も見える。
「あいつらがらい病患のふりをして大罪人を奪っていった奴らだ」
処刑に立ち会ってた町長と大きな斧を持っている処刑人―腕を斬られた男とは別人であろう―がいる中にやじうまとおかみさんとその子供達がいた。
「やっぱりあいつが
悲鳴のようなその言葉にチーは
殺せっと連呼しながら群衆が襲いかかってきた。
「俺達にはオールマイティーデスポートがあるそれに人殺しを殺すんだ何も悪くねぇ」
その瞬間、群衆の前に両腕を伸ばしてチーの目の前に守るように立ちはだかったのはペツであった。
そこにいたみんなが驚いてペツを見る。
「このチビットはたくさんの罪のない者を殺してきた、このまま生かしておいて罪を償わせよう」
青ざめるチー、ざわめく群衆。
「このチビットはそれほどの大罪を犯したのだ」
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