第19話家族

 城壁のある街から少し離れた場所に一軒家がぽつんと立っていた、しかし小さな庭に色とりどりの花がお話ししあっているように鮮やかに咲き誇っていた。

 そこの女主人にお願いしてチーの看病をしてあげる事になった。

 お昼を過ぎた頃だが心地よい風が窓から挨拶するように入ってきた。

 小鳥もやってきて、躍りを踊るようにてんてこ跳ねた。

 しかし冷たい布を頭に乗せたチーはまだ気絶していて、ハァハァとお腹を上下に動かし熱にうなされているようだ。

 あまりにも色んな事があったので風邪をひいたらしい。

 風の騎士はゆっくりと木製の小さい器に薬草の入ったお粥をゆっくりとチーの小さな口に運びこんでいた。

 コホコホと咳き込んだチーはボーッと赤い目を開く。

 「あれ? 私」

 すると俺がいる事に気づいた彼女は、ウサギのようにベッドから飛び降りてあっーと俺に指さした。

 「あの時のヘンタイ!」

 起きて早々ヘンタイ呼ばわり。変わってねぇなぁチーは。

 ちなみに俺はヘンタイでもないし、紳士でもない。

 木造で造られたこの家は決して新しい訳ではないが長い年月によって人が幸せそうに思ったり懐かしくなりそうな雰囲気も醸し出している。

 青いカーテンが綺麗に窓の脇にお行儀よくチョンとかけられていて、模様が黄色いひよこだった。

「あら。起きたのね」

 ニコリと優しい笑顔をくれながら首をかたむむけてるこの人は家の持ち主の奥さんである。

 体調が悪いチーを見ると真っ先に家に泊めてくれた。

 「お友達元気出た?」

 空っぽの木の器を片付けながらそう仰る。

 おかわりは?とチーに聞いたがチーはもじもじして首を横にふった。

 さっきの(お友達)という言葉もチーには少し恥ずかしい。

 チーにここまで至った経緯を話すと、彼女は奥さんに鈴のような注意しないと聞き取るのが難しい声で「お世話になりました」っとお礼をのべた。

 「あなたあまり人に優しくされてないのね」

 小さく頷くチー。

 「でもこの人達はあなたを優しく介抱してくれていたわ。このお友達を大切にね」

 大切な物ほど壊れやすいからね。

 俺が心の中で名言を呟いているとドタバタとここの奥さんの子供ちび達が騒がしく入ってきた。

 髪をひっぱったり頭を叩きあったりするやんちゃな二人の女の子だ。

 もう一人いるがそちらは大人しくクマのぬいぐるみを抱いて母親のドレスを握っていた。

 「あー、ウサギの耳だぁ!」

 頭の上の髪を結んでいる子がチーを指差した。

 小さいツインテールの女の子がその女の子のほっぺをぺちぺちした。

 「チビットという種族よ」

 なんでも知っているとその子は威張る。

 「こらこら具合の悪い人の前で騒がしくしてはいけません」

 子供達を引き剥がしてにっこりとチーと俺達に顔をむけるおかみさん。

 「元気が出るまでここにいてもいいからね、必要があるものがあったら遠慮しないでね」

 渡る世間に鬼はない。やさしさが染みる。

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