第18話救出

 どこからかフード付きローブを買ってきたガラハット、俺に渡し被るようジェスチャーした。

 彼女なりの何か作戦があるらしい。

 ペツ(ピーツー)とケケとププ(セイントスノーの二人)それぞれの本名が分かった連中には逃げ道を確保してもらった。

 チリンチリンと鈴をならしながら俺とガラハットはフードを目深に被り処刑台へと近づくと周りの人々がざわめいた。

 「らい病患者だ!」

 処刑を見学していた男が叫ぶと同時に人々は皆道を開けた。

 「なっ何用じゃ!」

 ひげを生やしたお偉いさんが俺達に近寄らないように後ろに下がった。

 「そのチビットをもらいたい」

 ひげおやじは何を言い出すかと不振な顔で俺達を睨み付けた。

 「こやつらは罪人じゃ、処刑をしなければならんのじゃ」

 俺はそいつに近づいた。

 「このチー、チビットが何かしたのか?」

 「今さっき処刑した奴と強盗や人殺しをしたのだ」

 ひげおやじは後ろに下がる。

 「証拠があるって言うんですか? そんな事して無じつの人を殺してたらあなた達こそ人殺しじゃないの?」

 俺は怒りに震えているのを実感した。

 「ええい! では勝手に持っていけ!」

 ひげおやじは俺達から離れたいのかすぐに先ほどのぶおを処刑した男に命令してチーの綱をほどく。

 とても残念そうな顔が腹が立つ。

 チーを助け出したと思った瞬間。

 ひげおやじはパチンと指をならした。

 処刑人が人間よりも大きいであろう――現にチーよりも大きい――斧を両手で持ちながら俺達の前に立ちはだかった。

 それをゆっくりと上段に構えると縄を斬るように馴れた手つきで俺の頭に振り下ろす。

 俺はチーを抱いたまま横に転がりそれをかろうじて避ける事ができた。

 さっき俺が立っていた場所に大斧の刃が処刑台の木の床につきささっていた。

 わーわーと野次馬が喜ぶ声が聞こえる。

 「おかしいよ、この人達なんで人が死ぬのを楽しんで見てるの?」

 俺の叫びを打ち消すように横一文字に斧を振り回す。

 もうだめだとと思われた俺は咄嗟に目をつむると何の痛みも感じず不思議に思い、ゆっくり目を開けると、斧はだらしなく地面に転がっていた。

 にぎりの部分に処刑人の両手と半分に切断された腕が血を流していた。

 その持ち主だった男はあまりに急で後から痛みを訴えはじめ、ついには床に転がり断末魔の叫びをあげた。

 風の騎士、ガラハット=シルフ、彼女の風のような斬撃が処刑人の両手を切り裂いていた、ローブの隙間から彼女の得物、愛剣カッツバルケルの剣身がのぞいて血がしたたり落ちていた。いったい何人の血を吸ってきたのでろう。

 ザワザワと騒ぐ見物人をよそに俺と風の騎士はローブに包まれてすべるように去っていた。

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