第12話おねぇちゃん頑張る。

 緑の騎士は微動だにせずにそこに立ち尽くしていた。いや、もしかすると俺を守っているのではないだろうか?

 「そいつは俺の獲物だ! 殺してぇんだ!

殺させろ!」

 火の騎士によるフランベルェから放たれる炎がカレーうどんを食べる時のように四方八方に飛び散る。

 風の騎士はその渾名の如く風を操るらしい、その風のおかげで俺は助けてもらった二回も助けてもらい、お返ししなきゃいけないかな? と思っていた。

 (ひよこ饅頭などいいかもしれない)

 すっと俺の目線にしゃがんだ風の騎士さん、金属音が俺の耳に新幹線並みの速さで届く、新幹線などが詳しければもっとよく表せるのだが俺はあまり知らない。知ってるのはドクターイエローぐらいだ。

 すると俺は絶句しそうになった、最後の句になりそうだった。

 甘い声が俺の耳にそよ風のように吹き抜けた。

 「おねぇちゃんに任せてね」

 風の騎士さんおにゃにゃのこ女の子だったのぉ?!

 いや、慌ててはいけない、女の子みたいな声の少年かもしれない。

 しかし騎士は兜をはずし始めた。

 会場がざわめく悪いざわめきようだ。

 「やばいぞ!」

 「騎士の顔を見たら目がつぶれる」

 などと大声で叫んでいる。

 真夏のつくつくぼうしみたいだ。

 ガチンと兜の留め金を外した風の騎士は黄色いトウモロコシの穂のようや髪をバサリと広げた。

 緑と黄でよくコーディネートされてると感心してしまった。

 予想に反してやさしげなとろんと母性あふれる姿の彼女は――そう、やはり女性であった――にっこりと俺に微笑む。

 「おねぇちゃんが来たからもう安心よ」

 彼女はキッとさっきまでの女神のような慈愛にみちた顔から、四天王のコウモクテンのように火の騎士を睨み付けた。

 「モルドレッド、ちょっとやりすぎ、あたしの可愛い弟が熱い熱いしちゃうじゃない、こんな悪趣味な闘技場を作ったりしてどんだけ人が死ぬのが見たいの? それに自分でもその命を奪うのに熱心になってだけどわたしに負けたらすぐ泣いてたわね、みっともない」

 火の騎士の歯がガチガチ言うのが少し離れた場所にいる俺にも分かった。

 相当怒っている。

 家康が三方原みかたがはらで甲斐の武田に無視されたぐらい怒っている。

 そんな怒って行動したら録な事にならないぞ。

 「っせー! おめえのようなブラコンに悪趣味なんて言われる筋合いはねぇ! 次こそ俺が勝つから覚悟してろ!」

 フランベルェを持ち直したモルドレッドはその剣を天空に掲げていた。

 するとどうだろう刃に群がる蛇のように細い火の帯がどんどんとつるぎをとりまき、大きな炎と化した。

 「新しい技だ貴様と貴様の弟を焼け焦げにしてやる」

 その炎は火の矢のようにまっすぐと俺達に向かって来た。

 「くらえ! ウロボロスフレイム!!」

 大蛇の炎は獲物を飲み込むように大口を開きそこにはご丁寧に牙も生えてた。

 ディテールにも抜かりないらしい。

 「変わらないわね、その技この前あんたが使ってたメデューサブラッドと同じじゃない」

 そう言うと風の騎士はカッツバルケルを構えると剣身けんしんからひゅうひゅうと音をたてているのが分かった。

 剣の周りに風が吹いている。

 その風は相手の大きな大蛇と同じように拡大し、ガラハットの黄金の髪の毛を逆立てる。

 しばらく目をつむっていた彼女はパッと目を開眼するとその風を相手の炎に向けて大声で叫ぶ。

 「フォーリア・テンペスト!!」

 ぶわっと炎に向かって竜巻のようになった風はやいばを離れ、火の大蛇は形が無くなり火の騎士の方へ大風と炎が混ざりあって彼をぶおんと空高く打ち上げた。

 たまやかぎや。

 火の騎士は子供が飽きてぶん投げられた玩具のような形になって落ちた。

 「おっお慈悲を……」震える声でモルドレッドが慈悲を乞う。

 騎士道をわきまえているのか風の騎士は「もうあたしの弟に手を出しちゃだめよ」っと念を押して慈悲をかけると、ニッコリと俺を見ていた。

 ところで俺、この人の弟ではないのですが。

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