第11話火の騎士との戦い
闘技場に舞い降りた鉄屑のような火の騎士は腰を低くして腰につるしてあった剣を抜いた。
抜く瞬間にパチパチと火花が散るような音がなり、そこから現れたのは真っ赤に燃える太陽ではなく真っ赤に燃えるフランベルジェという炎のような形の長剣であった。
マニアな俺、武器の事なら知ってるんだぜ。
そんな呑気な事思っていると、火の騎士は地面をけりあげファランクスの態勢の俺達に突っ込んでくる。
怯むなという言葉が一瞬にして無駄だという事が分かった。
そんな素振りを見せる間もなく味方の奴隷男が串刺しにされ、さらにそこから発する真っ赤な炎が彼を焼き付くし
そこで初めて、騎士の剣がファランクスの盾をも焼き尽く事を知る。
「さぁ次はどいつだ俺に殺させろ!」
皆が逃げようとしているのに対し俺は勇敢にもたちむかう。
少し会っただけだが一緒に戦った仲間を殺されて黙っていては男でない。(ちゃんと確認もした)
「お前との一騎討ちを望む」
俺の格好いい言葉に観客が大声で笑って応援してくれた。
「なにが一騎討ちだ、貴様はデスポートも持っていないのに俺を殺せると思っているのか?」
火の騎士の兜の奥がキラリと光った。
ほくそ笑んでるようだ。
俺はポケットから何かを取り出すふりをした。
「これは世にも珍しいスケルトンデスポートと言う物だ、火の騎士のお前が持っているオールマイティーデスポートと同じで特殊なデスポート、これは弱い奴には見えないのだ」
一瞬の沈黙……。
「およ? まさかお前モルドレッド=サラマンダーと言ったっけ? これ見えないと相当弱い奴だぞ」
わたわたするモルドレッド。
本当は見えるわけない、裸の王様作戦。
「そんな物見え見えだ! そうなれば話は早い、地獄の戦いを始めようか!」
モルドレッドはフランベルェ《炎の形の剣》を下段に構えた。
俺は石突きだけの元槍をくるくると振り回した。
よく学校の掃除時間に
――その時女子がふざけないでと怒っていたがきっとあの子は俺に気があったんだと思う――
「そんな棒でこの俺様に勝てると思うたか!!」
最近の若者――声からしてこいつは若いとおもふ――はすぐカッカする。
炎の形の
その辺りにメラメラと火と煙がたちのめる、俺のジーンズも少し破れた、ダメージジーンズにすれば問題ない。
「避けるんじゃねぇーー!」
モルドレッドが叫んで地団駄をふんだ。
「避けなきゃやられちゃうでしょ!」
相手の兜に向かって棒の先の石突きで相手を気絶させようと渾身の力で狙ったが、さすがは火の騎士と言われるだけの事はあり俺の攻撃をサッと間合いをとり後ろに少し下がる。
土煙があがり敵は今度は剣を手首をひねった独特な持ち方をした。
――ペットボトルの蓋を開ける時のように捻っている――
ぐるんと相手がそれを回して俺に向けると剣先から烈火の炎がたちこめる。
熱いし肉が焼けるような匂いがした。
よくみると右足がじゅくじゅくと火傷いやそれでは生ぬるい大火傷をおっていた。
このダメージで動きが鈍くなってしまった。
このままじゃ殺られる。
モルドレッドがチャンスとばかりに剣をふりあげた。
「くらぇぇぇぇぇ!フラムマグラディアートル!!」
まさに大軍の剣士が襲いかかっているように無数の業火が剣を作り出すようだ、しかしその切っ先はすべて恐ろしいかな、燃えさかる火だ。
もうだめだ、と目をつむり、ボロボロの盾をたよりにしていたがそれでは防げないであろう。
「なんでてめーが邪魔してんだぁ!?」
観客、奴隷、剣闘士がざわついた。
俺は自分自身が灰になっていると思っていたがちゃんと生焼けですんでいる。
恐る恐る目を開けてみると、上から下まで緑の騎士が『ネコの乱闘』という異名を持つカッツバルケルというドイツ特産の剣を持っていた。
最後の炎をその得物で切り裂き、ひゅっと地面に
「おめぇが干渉する事じゃねぇだろ! 緑の騎士、ガラハット=シルフ!!!」
もう一度助けてもらった、その人は三人の伝説の騎士の一人、風の騎士であった。
俺はその人を驚き、安心、しかし次はどうなるかという不安で腰をぬかしたままキラキラと夏の木々の葉のような騎士を見上げていた。
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