第4話チーの願い

 「やっぱりこいつはモノホンだぜ。それじゃ、いただいていくぜ」

 野太い声の親父は――略して『のぶお』――デスポートを取って遠ざかる気配がした。

 それを追いかける小さな足音が聞こえる。

 ここは木屋の中らしいのでよく足音が響く。

 「ちょっちょっと、あなたを信用してそのデスポートを取ってきてあげたんじゃない。それなのに私には何もなし?」

 彼女の言葉に太田道灌おおたどうかんした。

硬派な俺をメロメロにして俺には見えないが縄で縛ったのは彼女である。

 賞状ぐらいは欲しいよな。

 この状態で他の人を心配するほどお人好しな俺はそういえばこの縄を結んだのは可愛いウサミミの女の子だと気付くと下のあたりが熱くなってきた。達する達する。

 不純な事を考えているとなんだか騒がしくなってきていた。

 「ちょっと50ピピてどういう事よ! これじゃパンが一つしか買えないじゃないの」

 (察するにピピとはお金の単位らしい、50円ぐらいかな)

 チビットの女の子の怒りの声が聞こえたかと思うとのぶおの下品な笑い声がその声を遮るように鳴り響く。

 「おいおいチー――チビットの女の子の名前らしい――このデスポートを持っていると誰でも殺してもいいことになってんだぜ」

 なんと話の内容がよく分からなかったがそのデスポートを見せれば殺人等を行ってもいいらしい。

 でもあれは俺の黒いテカテカのゴキブリの背中のようなダンディーなスマホであるからしてのぶおは殺人をおかしてはならない。

 「だから、お前をこのナイフで一刺ししてその減らず口を聞けなくしてもいいんだぜ」

 辺りが静かになった。

 どうやらのぶおがナイフをチーに向けているらしい。

 手足を縄に結ばれ、幸いなのは耳と目で状況を認識できるぐらいだ。

 もしかしたらこれは演劇の練習でもしているのではないかと思われるがそうでは無いような気がする、こういうのには俺は敏感である。

 およ? 急に手足が動くようになった、見上げてみるとかわゆいチーの顔が近くにあった、真っ赤な目に涙をためている。

 「あんたデスポート持っているくらいだから強いんでしょ? あいつをやっつけてデスポートを取り返してよ、そしたらあいつを殺す事もできるでしょ」

 チーの物騒な発言に『君にその言葉はにあわないよ』っと気障なセリフを浴びせたかった。

 俺を縛っていた縄はまるでスサノオがヤマタノオロチをぶったぎったように細切れになっている。

 そしてチーは俺に草なぎの剣と後で名付けられる剣とはほどとおい短めのナイフを手渡した。

 そしてついにあののぶおを見てみるとなんとゴリラのような顔でマッチョでライザップで上着は着ていなくお風呂もろくに入ってなさそうな奴だった。

 声とそのままだわ。

 しかし奴はタマキンナイフと呼ばれている通称ボロックナイフ――そのナイフは鍔の飾りが本当に男性のタマタマみたいなのだ――をこっちに向けて窓はお昼の暖かい光を吸い付くしてるようにボロックナイフのやいばが光っている。

 イマカラタタカウノ?

 悲しいかなこの時俺は無性におしっこに行きたくなっていた。


 


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