第2話 ねこと少女

「みーちゃん!みーちゃん!」

夜明けの町角に幼い声がひびく。

エリちゃんは7歳。

可愛がっていた子猫が見当たらなくなったのでこうして探しているのだ。

わざわざ早朝に起き出して探しているのは、ここのところ不審人物の噂を聞くので朝なら大丈夫かな?と子供心に思ったから。


前の日には早めに眠いフリをしてウトウトと。

「あらあら、もうおねむなのかしら?」

というおかあさんの声を聞きながら早寝をして、日が昇る前に目がさめた。


「がっこう、あるからはやめに行ってこなくちゃ。」

まだまぶたが重いのをがまんして、そっと寝床を抜けると、まだ冷たい外気が漂う外へと出発した。


***


「おじいちゃん、みーちゃん知りませんか?これくらいのかわいい子猫ちゃんなんです。」

散歩をしているらしき老人に訪ねてみるが、足早に通り過ぎるだけで返事は無い。

朝はみな忙しいのだろうか?

これには、彼女も少し元気を無くしてしまった。

しょんぼりと歩いていると、日が昇る前に家を出たはずが、いつのまにやら薄明るくなっている。

「みーちゃん、どこにいるのかな?」

早く帰らないと、学校に間に合わなくなっちゃうし、おかあさんに叱られちゃう。




すると、ぽすっ!と、何かやわらかいものにぶつかった。

「ご、ごめんなさい?!」

誰かにぶつかっちゃったのかな?と、頭を上げると


朝日に照らされてまぶしく光る頭が目に入った。


***


わー、ふかふかー!


何かのアニメにあるような、ずんぐりして愛嬌あいきょうのあるキャラクター。

エリちゃんにはそう見えたらしい。

ごめんなさい、とあやまって頭を下げると、やさしく撫でられた。

ついでに、とみーちゃんの事を聞いてみる。

そのおじさんは、うんうん、とうなずいたかと思うとすたすた歩き出す。


「そっちにみーちゃんがいるの?」

すたすたすたすたすた。


懸命けんめいにおじさんに追いすがろうとしたが、大人と子供の足では速さが違う。

必死に走っているうちに公園に着くが、疲れてしまってもう足が動かなかった。


「んー。つめたーい!」

火照ほてった体に水が気持ちよかった。

公園で水を飲んで、少し休憩きゅうけいしようとベンチに座る。

みーちゃんは見つからなかったけど、少し休んだら、もう帰らなくっちゃ。

公園の時計を見ると、もうじき6時だ。

もう、お母さんたちも起きている頃だろう。

早く起きたから、ちょっとお外を散歩してたの、そんな事で許してくれるかな。

そんな事を考えていると、うつらうつらとしてきた。


***


「にゃー」

いつのまにか、眠っちゃっていたみたい。

ぺろぺろと顔をなめる感触で目を覚ますと、目の前にみーちゃんがいた。


「みーちゃん!」

思わず抱きしめるが、ふと時計に目をやると、もうじき7時になるようだった。

「たいへん!」

みーちゃんを抱きかかえて、慌てて家まで走り出す。


***


お母さんのお小言は短かった。

平日だから時間が無いのかもしれない。


「急いで準備しなさい。」

みーちゃんを猫つぐらの中に座らせると、追いかけるように背中から声をかけられた。

急いで手を洗って、ごはんをおしこむともう学校に行く時間だ。


「えりちゃーん。がっこういこう。」

近所のチエちゃんとミクちゃんが呼びに来たので慌てて歯を磨いて着替えなど準備をする。

「おまたせー。」

今日はあやまってばかりだ、とお友達に向ける笑顔もきまりわるそうになった。


並んで学校に向かうと、途中にむかしのえらい人の像、というのがある。

「どうしたの?エリちゃん?」

普段はある事すら忘れているようなものなのだが、今日に限って、なぜか気になった。




「朝のおじさん?」

思わず小声でつぶやくと、気のせいか、頭の所が光った気がした。

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