第46話 霧島夢啞
島の空に雲のように滞在している大魔法陣。
それに紅く照らされたサイパンの、森。
二人の少女が話しあっていた―――両者はともに、魔法少女である。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「えっ―――それ言ったの誰なのサ」
気だるげに、私は質問した。
この状況もきついけれどそもそも、アウトドアな性格ではない―――修学旅行というもの事態が、ちょっと受け付けない。
「えー?
高身長で声がよく通る女子生徒を、見上げる。
四峯は、実際男子ともよく話しているし呼び捨てにすることも珍しくない間柄だ―――と、教室での印象はその程度である。
まあワタシよりはコミュ力が高そうだ、というだけであって―――よく知らない。
自分は自分で、魔法少女の活動に苦心していたので深く考え込んではいなかった。
実際、白を基調とした
胸部にルーレットのようなマークが入っていた。
「魔法陣のことについては話したけど……もしかして、状況的に、かなりエグイ?」
四峯のこういう性格は、正直に言うと好かなかった。
疑問文を女子にも男子にもすぐに投げかけるのだ―――故に、友人が多い、という評判には首をひねる私である。
何でもかんでもお喋りなだけであり、四峰は人の四倍喋ってる、とクラスの誰かが笑っていた……。
「で……?その永嶋くんはどうしたノ?」
「別行動だよ―――? もともと違う班だったし、こんなことになってるから、魔法陣の話も、永嶋っていうか、みんなが言っていたって感じだけど」
まあ、重大事件だからそうなのだろう。
班って、修学旅行のアレのことなのだろうか……だとするなら随分と平和というか、場違いというか。
この島、魔怪人に襲撃されているんだよ?
私はそう考えているし、可能性も十分ある。
もはや修学旅行は終わっている―――と考えている私。
「
無邪気な笑顔に、内心苛ついた―――。
いま島を見張っている、それは、アンタのためでもあるんだから。
「……いま探しているところだヨ……ちょ、黙っていてネ、少し……!」
作業中なので気難しい、そんな自分を感じる。目を閉じたままに、ため息をつく。
目を閉じつつ、意識を『霧』に集中させる。
いま、二人の周囲は海風に揺らぐ霧と、木々だけだ。
それすらも紅く染められていることが、むず痒いけれど。
わからない要素が多い。そもそもにほかの魔法少年たちの能力を知らない霧島。
水蒸気———それが放たれてからずいぶんと時間がたっている。彼女はあまり―――というか全く動かず、この木々の中に居座っているものの、「探索」はしているという――—満足気である。
「私の手足みたいなものネ―――だから」
「そうなんだ……」
「戦ってる人がいるよ」
一瞬、目を見開く四峯と、目が合った。
「戦っているのは……誰? 誰と魔怪人」
「多分だけどネ……うっわ、地面割れてるし」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
つぶった目———その瞼に力が入っている。
霧島夢啞は今、
否———、厳密に言うと目に見えてはいない。
彼女の
把握できるのは大まかなサイズや、スピード、どう動いているか、など。
いずれも正確な数値化は出来ない。
川の流れをじーっと眺めているような気分だ―――と、彼女は最近思っている。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「―――知ってる魔怪人じゃないネ」
どうやらあの大鷲型の、バルルーンとは別件らしい。
「それだぁれ? 誰かケンカしてるの―――それも『魔法陣』が?」
「そういうことネ、『操られる』のはさすがに大噓だと思ったけれど、思いたかったけれど、こうなるとウチらにもそれがくる可能性がある―――ネ……だから、四峯さん」
私たちは、実はそれほど仲の良い関係ではなかった。
お互い、今まで魔法少女として戦う時は独り、だったのだろうと予想している。
それでも―――。
「だからサ、一緒にいようね」
「…………」
しばし見つめ合う。
「え、何、ドキドキしちった―――どしたの、夢亜っち?」
「……違うよヨそういう意味で言ったんじゃあ……」
「え?」
「え?」
兎に角。
アンタがここで操られる展開になると大変だっていう意味———アンタはここで足止めするほうがいい。
……あと、それやめてくれないかナ、夢啞っちってやつ……。
「永嶋の話だとさー、魔法陣は人間サイズだって言ってたけど、それを避けて進む必要がある」
「それ以外のバージョンもあり得るヨ」
「……ちょっとかんがえすぎだってー夢亜っち~!」
もう少し調べる必要がある、と私は感じた。
この島は危険地帯となっている。
人数はいる……クラスのみんな(まさかの全員である)片っ端から捜査するというローラー戦術も、逆に操られる可能性があるのなら、失敗。
やはり、知っていそうな者に聞くのが、事件解決に必要かと考えている。
それが一番シンプルだ、ただーーー!
「結局……なかなか引っかからないネ……」
探しもの、探し者……今の私の目標はバルルーン。
私ならここから一歩も動かずにあの魔怪人を見つけることが出来る。
そういう能力だからだ。
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