幕間1

私は私が分からない

 生まれたときから、ずっとここで暮らしていた。

 お父さんとお母さんがいつも家にいて、優しくしてくれた。

 お父さんとお母さんの友だちも家に来て、遊んでくれた。


 何でも買ってくれて、何でもしてくれた。



 だけどあるとき、自分の身体の異変に気付いた。

 身長が伸びない。髪が伸びない。爪が伸びない。胸が大きくならない。

 大人はあんなに大きいのに。

 私はいつ大人になれるの?

 他の子はどうなの?


 ……他の子? 他の子はどこ?


 子どものいない、大人しかいない世界に疑問を抱く。

 異様な環境に疑問を抱く。



 眠れない夜に部屋を抜け出して、トイレにこもった。何も出やしないのに。


 頭を抱えていると、生田さんがやってきた。

 どうしてここにいるって分かったのか。

 見られてる? 監視されてる?


 探したら、カメラがあった。部屋にも廊下にもトレーニングルームにも。

 カメラは私を見ていた。


 私の居場所も、心拍も脈拍も、全部見られている。

 なぜ?


 私は実験台? 

 定期更新って何? 頭に付けるもの、飲まされる薬。あれは一体何?


 でも、聞きたくても聞けない。

 パパとママが……

 お父さんとお母さんが……

 一ノ瀬さんと双葉さん……が困るから。

 二人を困らせるようなことはしたくない。


 私はどうすればいい?

 やっぱり、私が何なのか聞くべきなの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る