「詩集 永劫」(1月~8月)
舞原 帝
8月
44.不足の事態
この世に生まれてよかったと思うには
まだ何か足りない気がする・・・
命はもらった
皆と同じように立つこともできた
言葉を覚え話せるようになった
愛情をもって育てられた
友達ができた
人を好きになった
いい人たちばかりと出会えた
多くのものから感動をもらった
「詩」でも書くことができた――
これだけいいことがあったのに
この世に生まれてよかったと思うには
まだ何か足りない気がする・・・
まだ何か足りない気がする上に
その足りない何かがこの世にあるかも疑わしいと思う
だからどれだけいいことがあってもと
これ以上いいことがあってもと
そんな何の望みもないようなことを思ってしまう
足りない僕の頭では
何の望みも見出せなかったことを憐れむことで精一杯
故に「死にたい死にたい」と
「だから生まれたくなかったんだ」と
いつしか足りない僕の考えは
そんな甘ったれたことしか言わなくなっていた
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