8月

41.肯定する者

肯定されずとも 否定さえされなければ 十分生きていけたのに

一度でも否定されてしまったら それが何の考えもなしにされたものだったとしたら

十二分に傷ついて 立ち直れそうにないくらいに虚しい気持ちになって

そんな風になるために生きてきたのだろうかと 悔しさも滲ませるようになって

ふと心をどこかに捨てたくなって 何の考えもなしに命も棄てたくなって

ふいに人生の終わりを目の前に見たような気がして 途端に胸が張り裂けて・・・


生きていたときは 肯定されずとも 否定さえされなければ それで十分だったのに

死んでしまった今となっては 肯定されたかったと そう思うようになっていて

それが引き金となって 無い身体を 無い心を 再び欲するようになって

一体全体どのくらいそうしていたのか 思いをただがむしゃらに掻き毟って

無い血で 命を呼び戻そうと つまり自らの死を否定せんとした所為で

新たな人生を目の前に突きつけられてしまって もはや何もかも忘れていって・・・


――生き始めてまだ十分と経っていない

だから肯定はもちろん まだ否定もされていない

この先していくことが何であれ

たとえそれを誰かに否定されたとしても 自分で肯定すればいい

そういう考えが苦もなく出てきたのは何故か

頭で考えるより先に その理由を心は知っているようだった

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