第2話

そして今あたいがいる場所はというと、商店街だ。商店街をぶらぶらとしながらあるいているんだ。あたいは財布を持っているかどうかをポケットを探って確認した。「あった……」でもポイントカードや免許証の類は見つからず、あたいが誰なのかというのは依然として分からなかった。「なんなのよ。もう」と愚痴を吐いては見たものの、もし何かしらの事件に巻き込まれて記憶がないんだとしたら、当然のごとくあたいを証明する物は財布に残っているわけないわよね。そしてこの財布が本当にあたいのものだという証拠もどこにもなく、どこの誰かのもしかしたら犯罪者の財布を罪を押し付けられる目的で持たされている可能性もゼロではない。だけど、それを言ったらあたいの今後が不安になってしまう。なぜならばそう考えたら手持ちの金がゼロ円ということになるから。だからあたいはこの財布はあたいのだって、信じきることに決めた。そうこれはあたいの財布よ。そう信じ始めたら、この財布はあたいの財布にしか見えなくなってきた。この使い古された財布の手触り、匂い、重さ、色、全てがもうこれはあたいの財布だって、直感とは違うけど、確信したのさ。で、この財布の中にはいくら入っているのかな。「あっ、100万円」

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