習慣

日本語破綻者

第1話

まずは、あたいが誰かってことなんだけど、記憶喪失だから分からない。でもだからと言って全てが分からない訳じゃなくてこうして日本語も喋ることが出来るし、書くことも出来るし、ひらがなだってお手の物だ。割箸だって割り方を知っているし、鼻のほじり方だって上品にほじれるから、何の問題もないかと思いきや、肝心な自分の名前が分からないのは結構やばいかもと思ったりしている。しかし、現時点でお腹が減っていないということを考えるとあたいの記憶がなくなったとは言っても、記憶が無くなる前に何かしらの固形物をあるいは液を飲み込んだのかもしれない。何を食べたのかを本当に知りたいのであれば、便を検査すればいいのだけれど、あたいにはその勇気はない。子供は自分のうんちを自分の子供だと思っているとテレビでやっていたけれど、大人のあたいには子供にはどうしても見えなかった。というかあたいは本当に大人なのかどうかもイマイチよく分からない。だけど、こんな口調をしているけれど、股間に付いている物があたいが男だっていうことの証明にもなっている。いやそれすらも分からない。なぜならば自分自身の記憶が無いのだから。ということはつまり、トドのつまりトドが何かに詰まったように思われるかもしれないけれど、それは全然違う。つまり、あたいはこの口調を信じるならば女の可能性も否定は出来ない。それを性転換で男になった可能性もあるし、むしろなったという、自分の意志ではなく、ならされたという可能性もわずかながらある。そしてそれをもしやった奴がいるならば、相当なイカレクレイジーだし、もしかしたら何かしらの人体実験化もしれないと思うと、心の中がぞわぞわした。あるいはあたいは何かしらの犯罪をして、それの実験化もしれないし、ただ誰かに襲われたのかもしれない。無作為に。あるいは視点を広げてみると、もしかしたら宇宙人がやったのかもしれないし、NASAかもしれない。あるいはここはロボットの世界でロボットに改造されたのかもしれない。記憶があるとは言っても言葉ぐらいしか思い出すことは出来ないのだから。しかしながら、お腹が空いていない、力が出ないということは微塵もないので、ひとまずは詳しく言うならば、今日ぐらいは何も食べなくても、まあ餓死するということはなさそうだと思い、重い気持ちが和らいだ。そうこれは高度なギャグだ。

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