8.サービス終了
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窓から眺める夜空に星はなかった。月だけが浮かんでいて、真っ黒な幕に空いた穴から光が漏れだしているみたいだった。美しい星空が広がっているのなら僕も救われたのかもしれない。だけど現実にうずくまるのは巣喰われた僕だけだ。
あるいは、この部屋は本当に黒い幕に囲われているのかもしれない。もう逃げられない。逃さない。誰がそうしたって、僕自身がそうしたんだ。ひたり。ひたり。蛇口から垂れる水滴がステンレスのシンクを叩く。何者かの忍び寄る足音だ。
あの日の努力と情熱も、勝ち取った栄光と名声も、たくさんの冒険と仲間達も、昨日の晩に露と消えた。
数々の理想の残滓がモニターに輝いている。
手元に残ったのは、無数のスクリーンショットだけ。学歴も、職歴も、預金残高もない。そして、触れていた全てが幻想だったと知った僕に、今さら扉を開く力なんてあるはずもなくて。
だからこのまま、この部屋の中で朽ちてしまうのがいちばんいい。
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