第32話 不落の要塞
時は少し
二番目の巨神は、幼さの残る女の子が、白いワンピースの上に青いチェックのエプロンドレスを付け、腰には白い前掛けを着けている。それはさながら、オズの魔法使いに登場するドロシーといった
このオズの巨神は、ヴァイクたちを見つけると、手下としてカカシ、ブリキの木こり、
『知恵の魔法』
『感情の魔法』
『勇気の魔法』
をかけた。すると、今まで動かなかった三体が、色を取り戻したかのように動き出し、ヴァイクたちを襲い始めた。
オズの巨神は、カカシ、木こり、ライオンを次々召喚すると、召喚したそばから魔法をかけ、ヴァイクたちに向かって突進させる。辺りは
そしてオズの巨神は手下たちをひとしきり召喚しきると、オズの巨神はエストマルシェに向かって巨大な水の球を飛ばし始めた。水の球はヴァイクたちの頭の上を通り過ぎると、エストマルシェの門に当たった。その瞬間、ジュウという音とともに門が溶ける。
ヴァイクたち二番隊は顔を見合わせると、顔からさーっと血の気が引いていた。
二番隊の構成メンバーは、ヴァイク以外を魔法使いで固めている。
ヴァイクは二番隊の魔法使いたちに向かって叫んだ。
「これから、水の魔法への対応と、化け物の処理をする役割に分ける! 火属性の魔法が得意なものは巨神が打ち出す水の魔法を撃ち落とせ! それ以外のものは化け物どもに魔法をぶつけろ!」
ヴァイクはそういうと、オズの巨神が生み出した手下の群れに突っ込み、背中の
『
この技は、武器オタクであるヴァイクが生み出した技。自分の武器を、状況に応じて、好きな武器に変化させられる。
目の前には先兵隊としてカカシの群れが突っ込んでくる。ヴァイクが大剣を振るうと、カカシが数体まとめて吹き飛んだ。
「もう一丁!」
カカシの後ろからはブリキの木こりが斧を引っ提げて襲い掛かってくる。
ヴァイクは木こりのいる方向へ向けて大剣を振り下ろす。しかし、伍を組んだ木こりたちが自慢の斧を使い、ヴァイクの大剣を受け止めていた。
「ムッ!」
それならば、と、ヴァイクは自分の大剣を巨大なハンマーに変え、木こりたちの斧共々辺り一帯の手下たちを吹き飛ばした。
「グワァッ!」
ヴァイクが巨神の手下たちを倒していると、後ろの方で誰かの叫び声があがる。
ヴァイクが振り返ると、そこには自分の隊の魔法使いたちが巨神の手下たちに襲われているところだった。どうやら手下たちの動きが早すぎて的を絞り切れず、手下たちを魔法で処理しきれないらしい。結果、あぶれた手下たちはヴァイクの後方支援をしている魔法使いを狙いだしたというわけだ。
魔法使いの一人を襲っているカカシは、魔法使いの胴体から頭を切り離そうとしている。ヴァイクはすぐに戦線から離脱し、魔法使いたちの元に戻り、襲われている魔法使いたちを救い出した。
戦況が押されていると見たヴァイクは、すぐさま魔法使いたちに指令を出す。
「俺が化け物を引き受ける! 今、化け物の処理を担当している奴らは、三百メートル後退しろ!」
ヴァイクはそういうと、巨神の手下たちの前に立ちはだかった。
エストマルシェが出来てから今まで、ヴァイクは街を守り続けてきた。魔法使いたちはヴァイクの指示を信じ、ヴァイクから距離をとる。
「さあ、化け物どもよ、俺を見ろ!」
『挑発』
ヴァイクが武器を高々と上げると、今まで魔法使いたちを標的にしていた巨神の手下たちは、全てヴァイクに標的を変更した。
巨神の手下たちは、ヴァイク目掛けて一斉に襲い掛かった。ライオンは、鋭い牙を見せ、ヴァイクを食い殺そうと飛び掛かってくる。
『
ヴァイクは武器をすべて巨大な盾に変え、その場で踏みとどまった。
その間にも、第二陣、第三陣と、手下たちの攻撃は休まることを知らない。ヴァイクは仁王立ちで、手下たちの
「今だ! 俺ごと攻撃しろ!」
ヴァイクの言葉を聞いて、魔法使いたちはそれぞれ魔法陣を展開する。
手下たちがヴァイクの周りに固まったところを、後ろに控える二番隊の魔法使いたちが、それぞれの魔法で除去していく。
ヴァイクの周りは様々な魔法が放たれ、まるで花火のように色彩豊かな衝撃が辺りを照らしていた。
◇
ヴァイクが手下たちの攻撃を受けている頃、ユータたちルーキーで構成される五番隊が一番奥の巨神に辿り着いた。ユータたちが辿り着いた時、街の方を見ると、リヒトマンによって一番目の巨神が粉々に粉砕されていた。
巨神を倒した吉報に、戦場からは大きな歓声があがる。
「やった、やったんだ!」
ユータたちは心の中でガッツポーズをする。次は、自分たちの番だ。五番隊のルーキーたちは、心の底から湧き起こる興奮で、胸がいっぱいだ。
しかし、巨神の姿を見て一同は
何故なら、五番目の巨神は、誰もが小さなころに絵本で見たことのある、あの有名な英雄だったからだ。
巨神は、五十メートルの巨体に巨大な剣を持ち、頭に白い鉢巻をしている。
甲冑に身を包み、勇ましげな表情で、ユータたちを見下ろしていた。腰には大きな袋。
背中には、日本一の文字が入った旗。
巨神はユータたちを斬ろうと、腰に下げた鞘から二十メートルはありそうな刀を引き抜いた。
「桃太郎――」
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