第9話 セリカの本気
僕たちはアイテム生成師のパンプキンと、闇の神ダーク・ウルトラゴッドとの激闘に勝ち、準決勝にコマを進めた。
準決勝の相手は、メカニックの二人だった。
二人は頭に白いタオルを巻き、青いツナギを着ている。
マイクマンが中心に立つと会場がざわめきたった。何故なら、相手チームであるCチームは、一回戦で自分たちで作ったというロボットを召喚し、Dチーム相手に無傷で勝利を収めたという強者。そんな相手に、僕たちがどれだけ戦えるのか。注目の一戦だった。
マイクマンが試合開始の合図をする。会場は、
会場には、実況と解説の声が響いた。
「さあ、準決勝が始まりました。一回戦をセリカ選手の炎と、ユータ選手の相手の隙をつく攻撃で勝利をもぎ取ったAチーム。対して、自家製の鋼鉄ロボットで相手の攻撃を受けずにゴリ押し突破したCチーム。カエデさん、この試合、どちらが勝つと思われますか?」
「そうですね。先ほどの試合を見ていると、Aチームは、ユータ選手の攻撃もセリカ選手の炎も、少し火力不足といった感じがしましたね。先ほどのままでは一回戦同様、一撃も与えられずにCチームに敗けてしまうでしょうね」
随分な言い分だ。
そうこうしているうちに、Cチームの二人は、変なポーズを取り始めた。
「「僕らが作ったこのマシンで! 君たちを倒すよ!」」
二人は大きく息を吸い込むと、天に向かってあらん限り叫んだ。
「「ガンダァァァァァァァ!!」」
二人が叫ぶと、空から十メートルは有ろうかという巨大なロボットが降ってきた。二人はロボットにいそいそと乗り込む。メタリックに輝くボディを見て、僕は少しカッコいいと思ってしまった。
しかしなぜ上から降ってきたんだろう。ここは地下のはずなのに……。
『超合体・マキシマムβ』
マキシマムβは、仮面ライダーよろしく変身ポーズをとり、腕を腰に引いた。
――ピッギャァァァン!! という、謎の効果音とともに、眩いばかりの光を放つ。何か攻撃でもするのかと思ったが、ただの演出だった。
さあ、マキシマムβ勝負だ。僕は、胸のドキドキを押さえながら、武器を構える。そして、飛び出すために、力強く大地を踏みしめる。
「待って」
セリカが、僕を引き留めた。
「ユータ、私に任せて。少し、本気を出してみる」
セリカには何かやりたいことがあるらしい。僕はセリカの自信にかけてみようと思った。
「見せてくれ、セリカの本気を」
セリカがマキシマムβの前に立ち、精神を集中させる。
辺りには巨大な魔法陣が現れる。
「おっと、セリカ選手が何かするようです! 両足を踏みしめ、ドラゴンに自分の魔力を送り込んでいます!」
「きっと、生半可な攻撃では通らないことに気づきましたね。Aチーム、金属に対して比較的通りの良い、セリカ選手の全力の魔法に賭けるようです」
「何をするのか知らんが、僕らにはそんな攻撃、効かんぞ!」
マキシマムβは余裕の表情だ。
セリカが、ハナコに指示を送る。
「穿ち、貫け。
『
ハナコは口腔にほのかに黄色がかったエネルギーを溜めると、そのままそれを吐き出した。エネルギーは一筋の閃光に収束され、真っ直ぐ伸びていく。
「なんの! そんなものはマキシマムβには効かない!」
マキシマムβはかっこいいポーズをとった後、手を前に突き出し叫んだ。
『
「セリカ選手はドラゴンの口から極太のレーザーを放ちました! それに対抗して、Cチームは、ロボットに搭載されたバリアを全力展開しています」
「凄い威力です。レーザーがバリアに衝突した衝撃で、会場の砂が舞っています。セリカ選手の魔力がルーキーにしては規格外であることが分かりますね。こっちまで砂が飛んで……ぶぇっ!」
衝撃で僕の体が吹き飛ばされそうになる。セリカはハナコの後ろで必死に耐えている、が、次第に後ろに下がり始めた。
「このままじゃまずい――ユータ? 」
僕はセリカの体を支え、二人で飛ばないように耐える。セリカは前に向き直り、精神を集中する。
レーザーを放ってから十秒ほど経っただろうか。
「どちらも実力は、拮抗しています」
「もう、限界――」
セリカの魔力にはすでに限界が訪れていた。
――その時だった! マキシマムβのバリアが、ピシッという音を立ててひびが入ったのを見た。
「おっと、ここで動きが。なんと、セリカ選手がわずかに押しています!」
「頑張れ、セリカ!」
「持ちこたえろ! マキシマムβ!」
「うおおおおおおおッ!」
セリカは足を地面に強く踏みこむ。セリカがハナコに残りの魔力を注ぎ込むと、レーザーが勢いを増した。ついに、レーザーがバリアを貫通する。バリアはあっけなく粉々に砕け散った。
貫通したレーザーがマキシマムβに当たり、マキシマムβの胴体に風穴が空いた。風穴の周囲は、熱でどんどん赤くなっていく。
会場には、マキシマムβから発せられるアラートが鳴る。
Cチームの二人は、緊急離脱をしようと慌てふためいている。が、中で絡まってうまく脱出できない!
熱は白い光を放ち、マキシマムβの内側から、盛大な音を立てて爆発した。
「「何故じゃぁぁぁ!?」」
マキシマムβの中にいた二人は、爆発の勢いで吹っ飛び、場外へと消えていった。
「ついに決着! 決勝へコマを進めたのは、Aチームだ!」
マイクマンが叫ぶと、会場は歓声に包まれた。
「少し疲れた。控室で休ませてもらうわね」
セリカがぐったりとした表情で言う。無理もない、あれだけ全力を出したんだから。僕は頷いた。
僕たちは闘技場を後にして、控室へと向かった。
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