第8話 闇の神 ダーク・ウルトラゴッド
ついに、闘技大会が始まった。一回戦第一試合。ユータたちの相手は、漆黒の影と、大きな行商カバンを背負ったチームだった。
コロシアムの壁に取り付けられた実況席には、二人の影があった。
「さあ始まりました。闘技大会ルーキー杯一回戦第一試合! 好きな鍋はぶりしゃぶ! 実況は私、ミズキと」
「好きな鍋はたらちり。解説のカエデです。よろしくお願いします」
「Aチームは、ユータ選手と、セリカ選手。Bチームは、ダーク・ウルトラゴッド選手と、パンプキン選手ですね。カエデさん、注目の選手はいらっしゃいますか? 」
「そうですね、Bチームですと、パンプキン選手は質の良いアイテム生成師として巷で噂になっています。おっと、そのパンプキン選手が動きましたよ」
パンプキンは背中のカバンから、大きな釜と、いくつかのアイテムを取り出した。
さらに、パンプキンは取り出したアイテムを釜の中に入れ、木の棒で混ぜはじめた!
「その辺に生えていた薬草と爆薬、井戸水を混ぜまして~できた!」
『
パンプキンは、何やら奇妙な液体を生成した。
「次はプラスチックと爆薬、鉄の破片を混ぜまして~」
さらに先ほどと同じようにアイテムを混ぜて、釜から新しいアイテムを創りだす。
『道具生成【
釜から出てきたのは、おもちゃの銃が作られた。パンプキンの道具生成はそれだけでは終わらない。
「さらに! ブーステッド・ポーションでこの銃を練り上げる!」
パンプキンはさらに、釜の中に銃とポーションを入れ、混ぜる。
『
合成の結果、釜の中からは半透明な水色の銃が
「これで弾薬無限の銃の完成! そしてぇ!」
パンプキンの周りに、大きな魔法陣が顕れる。
『
パンプキンから赤い魔力が放たれ、魔法陣に吸い込まれていく。パンプキンは魔法陣に銃を突っ込むと、手品のように魔法陣を二つに分裂させる。気が付くとパンプキンの両手には、二挺の銃が握られていた。
「おっと、これはすごいですね。無限弾数のアイテムを二挺、この短時間で生成してきました。カエデさん、これはどういった仕組みなんでしょうか? 」
「道具を生成するには、素材になるアイテムと合成する時間が必要です。また生成する道具が強力になればなるほど時間がかかります」
「なるほど。しかし、一挺でも時間がかかる無限弾数の銃を二挺も作るなんて、普通に考えたら一挺の二倍の時間がかかりますよね。これでは隙があまりにも大きすぎませんか」
「はい。なので今回、拳銃を二挺生成する際には、自分の魔力をコストにアイテムを二倍に増やす工程を組み込んでいます。これなら生成時間のショートカットができます」
「これで二挺拳銃だ! そらよ」
「おっと、自らが作った道具を、ダークゴッド選手に渡した。これはどういうことなんでしょうか」
パンプキンが二挺拳銃を投げ、ダークゴッドがそれを受け取る。
ダークゴッドは拳銃を構えると、呪文の詠唱をし始めた。
「神への供物を捧げし
ダークゴッドは体中から禍々しい闘気を出した。闘気は次第に二挺の拳銃に集まっていく。
「暗黒を侍らせし闇の神。天地一切を破滅色に染め、
――ラグナロォク……!! 辺り一面を染める紅。
『
ダークゴッドが拳銃をユータたちに向ける。二挺の拳銃からは、
「弾数無限の武器を作り出すなんて、あの子、結構やるわね。でも、相手も初心者だから、性能の割には火力が追い付いていない。おそらく、強力なオプションを付けた武器を作るのがあの子の役目。それを、ダークゴッドが闇の魔力を弾丸にこめることで火力不足を補っている。まったく、素晴らしい連携だわ」
「……カエデの解説を、セリカ選手に先に言われてしまいました。補足するなら、ダークゴッド選手は、魔力の扱いに慣れていないそうで、銃を媒介に魔力を放つことで、より効率的に攻撃を行えるらしいです」
「へえ、そんなことやってるのか。というか、セリカちょっと嬉しそうじゃない?」
「別に。まあ、このまま守ってるだけじゃ
「分かった、じゃあ、僕が行くよ」
ユータは刀を構える。
「ちょっと待ちなさい。無暗に飛び出しちゃ――」
『
地面を強く蹴り、ダークゴッドが闘気を再装填する隙に、一気に懐に潜り込む。
「おっと、ユータ選手が刀を構えて突撃しましたよ! カエデさん、これは……」
「これはまずいですね。不用意に飛び込むと、相手の手痛い反撃が待っていますよ」
「むっ、来たか」
ダークゴッドがユータに向けて銃を構える。が、銃弾に闘気が載らない。
「おい、闘気が尽きた」
「分かったよ」
『道具生成【マッスル・ポーション】』
パンプキンが、ダークゴッドにポーションを投げると、青白い光がダークゴッドを包む。
「クハハァ! 暗黒の力が漲ってきたわ」
ダークゴッドのオーラが一段と濃くなる。
ダークゴッドは、その場で銃を交差させ、祈り始める。
「我に従順なりし闇の
『
ユータが振り抜いた刀は、ダークゴッドが出した黒いオーラによって受け止められ弾き返された。
「ユータ選手、おしくも
「くそっ」
ユータは弾き返された反動で、空中で一回転し、着地した。そのまま一旦セリカの元へ戻る。作戦会議だ。
「無茶しないで」
セリカが怒る。
「ごめんって。それよりも、あの闇の衣で防御されると、厄介だな。闘気の供給さえあれば、攻撃と防御が完璧にこなせるってわけか」
「しかも供給元のパンプキンは後ろに隠れているから、ダークゴッドを倒さなければ勝てない」
「ああ、このままじゃジリ貧だ」
「Aチーム、Bチームのコンビネーションに八方塞がりです」
「いやあ、パンプキン選手にポーションの素材がある限り、Aチームの攻撃は完全にシャットアウトされますからね。何とかして、闇の衣を破らなければなりません」
「じゃあ、あの闇の衣を剥がせばいいってわけね」
「難しくない?」
「やってみる。行きなさい、ハナコ」
『
セリカがそう命じると、ハナコは口から、人の頭ほどの火球を発射した。
「そんなチンケな炎、我が闇の衣の前では無意味! 」
ダークゴッドは、再度、闇の衣を展開した。しかし、ハナコが放った火球が闇の衣を粉砕する。
「愚か者が! 我の衣にィ穴が開いたわ!」
「もう一発」
セリカはもう一度、ダークゴッドに火砲を放った。ダークゴッドはセリカの攻撃に合わせて、再度、衣を展開する。
「グハハァ、何度やっても同じことだ――」
「セリカ選手、二発の炎で、闇の衣に穴を空けましたが、ダークゴッド選手へは惜しくも届きません」
「ダークゴッド選手も、闘気を使い果たして再展開に遅れています。今が、大きなチャンスではあるんですけどね」
「あれ、刀の子がいない」
パンプキンは、場の様子を観察していた。
「ダークゴッド、上だ! 」
炎が消え失せた後に、ダークゴッドの目の前に現れたのは、刀を振りかぶったユータだった。
「おーっと、ここでユータ選手。炎の影に隠れ、闇の衣が剥がれる隙を狙った連携だ! 」
「とどめだ」
ユータは、ダークゴッドに刀を振り下ろす。ダークゴッドは、その一撃で昏倒した。
「あとはお前だけだな」
「降参」
パンプキンが、白旗を上げた。
「ここで決着! セリカ選手の機転と、ユータ選手の隙をついた攻撃が活きました! 一回戦、第一試合はユータ選手とセリカ選手の勝利です! 」
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