第7話 闘技大会開幕

 モンスター襲撃事件を解決した功績もあり、急遽、数合わせで出場することになった闘技大会。ついさっき、リヒトマンとの試合で痛めた腰をかばいながら、ギルドから闘技場に続く階段を下りていくと。そこは一万人以上の人間が入れそうな広さをほこる、巨大なコロシアムだった。


「彼女が、君のパートナーだ」


 受付に行き参加登録を済ませると、早速、僕とチームを組む選手が紹介された。


「セリカよ」


 受付が紹介した僕のパートナーは、深紅の竜を侍らせた少女だった。

 少女は魔法使いらしく、かしの杖を持っており、フードが付いた、こげ茶色の目立たないローブを羽織っている。


「ドラゴン? 」


 僕の声に反応するかのように、少女の背中に乗っているドラゴンは気怠そうに欠伸をした後、気まぐれに小さく火を噴いた。


「ええ、これは猛火竜レッドドラゴンのハナコ」


 セリカと呼ばれた少女がハナコの喉を撫でると、ハナコは気持ちよさそうに喉を鳴らした。


「僕の名前はユータ」


 僕が自己紹介すると、セリカは僕の方をじろじろと見た。


「あれ、武器はひのきの棒一本? 」


 どうやら僕の武器が貧相なのを気にしていたらしい。これからチームを組む相手に、貧乏くじを引かれたと思われたら困るので、目の前で刀を生成する。


錬磨法れんまほう鉄刀てっとう】』


「僕は刀使いだ」


「へぇ」


 セリカは僕が刀を生成したのを見て、なにやら納得したようだった。

 

 それから僕たちは受付を離れ、会場へと足を踏み入れた。

 

 エストマルシェ地下に造られたコロシアムは、開始直前の熱気で満ちていた。

 今回の大会では、リヒトマンが選んだ期待のルーキー十六人が集まり開催される。

 二人一組のチーム対抗で行われるトーナメント戦。

 僕たちは、チームA、つまりいきなり試合で戦うことになる。


 僕たちは開始直前に会場入りしたらしく、相手チームは既に所定の位置にいた。

 僕たちが試合会場の待機場所に入ると、向こうに僕たちと戦うチームの姿が見えた。


 そして、僕たちと相手チームとの間には紅いタキシードを着たマイクマンが立っている。マイクマンがマイクを手にすると、会場が一段と沸き立った。会場の歓声が落ち着くのを待ってから、マイクマンは話し始める。


「皆さん、お待たせいたしました。これより、エストマルシェ闘技場オープニングセレモニーとして、ルーキーたちによるタッグトーナメント大会を開催します!」


 マイクマンの声が会場の隅まで響き渡る。


「ルールを説明します。本大会は、二人一組のタッグマッチ。武器、技、アイテムの仕様は自由となっております。また本大会の特別ルールとして、チーム全員が気絶するか、試合を降参すると、敗北となります」


「それでは、選手の入場です」


 まずは僕たちの番だ。


「Aチーム。刀使いユータ選手と、ドラゴン使いセリカ選手!」


 僕たちはマイクマンの指示で、コロシアムの中央に向けて歩き出した。

 次は、相手チームの番だ。


「Bチーム。アイテム使いパンプキン選手と、暗黒の魔王ダーク・ウルトラゴッド選手!」


 両チームが、コロシアムの中央で顔を合わせた。

 パンプキンは、小柄でふくふくとした顔の大きなカバンを担いだ人型。

 ダーク・ウルトラゴッドは、何やら影のような姿で、腕を胸でクロスさせた奇妙なやつだった。そして、怪しげにクククと笑っている。


 僕らも相手チームも、意気は十分だ。

 今から大会が始まるんだ。自然と、僕らの鼓動が早くなる。


 両チームが出そろったのを確認してから、マイクマンが左手を高々と上げる。

 それを見て、会場が息をのむ。


「それでは――」


 マイクマンが左手を振りかざす。


「第一回戦第一試合開始!」


 マイクマンの開始の合図で、会場が大歓声に包まれる。これから、僕たちの激闘が始まろうとしていた。

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