第一章番外編 [魔王の理由]

私は現魔界を統べる31代目の魔王。ワズレール・ヲウロ。

私は昔から『人間』と、言う者に魅了されていた。お互いの複雑な思いそれが絡み合う時や、すれ違う時。その姿には魔族には見られない美しさがあった。

昔から城に居るのが退屈でよく城から抜け出して人間界に行っていた。魔王の子供だったとはいえ、所詮は子供。同じ様な景色に酔い、迷子になってしまった。

ここは何処?誰もいないの?と、踞って泣いていたら、ある男性が来た。人だった。父が人間は怨むべき極悪非道な奴等だ!と教わっていたがその人間からは少なくとも悪意の気配はしなかった。寧ろ包み込んでくれるような、優しい善意だった。

その者に案内され住む村に案内された。みんな知らない者なのに優しく接してくれる。でもそんな村は突如色を失った。


私の配下が来た。人間たちを見ると目の色を変えて襲い掛かった。目の前には助けてくれた男性が剣に刺され血を流している。

「こ、こいつらは、魔族ッ。坊主、早く、ここから、逃げr」

痛みを耐えながらも途絶え途絶えで警告をしてくれた男性は、頭と胴が取れていた。


「さぁ、帰りますよ。ここに居ては穢れていってしまいます。」

「わかった。」

配下に連れられ男の家から出ると、活気のある優しい村は鉄のにおいと赤色に染められた地面になっていた。

(何故、罪も無い。精一杯生きようとしている者が殺されなければならんのだ。)

連れられていく最中、私は思いつめた。こうなった原因は何なのか。私なのか。二度と起こさない様にするにはどうするべきか。

(私が、私が二度と起こさない様にすればいいんだ。)

これが史上最高で最低の称号を受ける決意をしたときである。

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