虹の世界

こんなに近くで虹を見たのは初めてだ。

赤、橙、黄色、緑、青、藍、紫と、七つの色が綺麗に見える。

そして、虹の架け橋なんて呼ばれている通り、その下には川が流れている。

川には魚が泳いでいて、その全てをひっくるめて凄く美しい光景だなって思った。

だから由紀が虹の上に登ってみようと言うのには何の異論もなく、僕たちは虹の橋の上に登って七色に光る世界を楽しんでいた。

しばらくして由紀がアッと叫んだのでその視線の先を見ると、虹が端の方からだんだんパラパラとほどけて消えていて、もう僕たちが登ってきた階段にはどう頑張ってジャンプしても届かないくらい離れてしまっていた。

「どうしよう、どうしよう、このままじゃ虹がなくなって地面に落ちちゃうよ。」

私が虹に乗りたいなんて言ったせいだ、と由紀が泣きそうになっているので僕も泣きそうになってしまうけれど、ぐっとこらえて何とかできないか辺りを見回してみる。

虹と一緒に、そこにあった川や魚も七色の粒になって空気中に広がっていく。七色の粒はそれぞれ、赤と橙と黄色は上の方に上っていき、青と藍と紫は下の方に落ちて行き、緑はまだしばらくそこらへんに漂っていた。

「ご覧よ由紀、虹の赤い部分は凄く上の方まで飛んでいくよ。きっと色には重さがあって、上から軽い順番に並んでいるんだ。」

すると由紀もべそをかくのをやめて「そうか、それじゃあ赤とか橙の明るい色が虹を空に浮かべる力になっているんだね。」と言う。

「だったら赤い色だけ集めていけば、僕たちも上の方に飛んでいけるんじゃないかい?」

「そうだね、そうかもしれない。いいやきっとそうだよ。」

そうして僕と由紀は、まだ消えていない虹の赤い所だけを急いで集めて、カバンや服の中に詰めていった。

やがて虹が半分くらい消える頃、虹の残り半分の赤い部分を全部詰め込んだ僕たちはふわふわと浮かんで空の上に飛んで行った。

「やった!飛んでる!」

「やった!やった!」

僕と由紀ははしゃぎながら、離れないように手を繋いで月に向かって飛んでいった。

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