茶色の詩

『変わり目の詩』

遠くから聞こえる雷鳴と無糖のコーヒーが冷める頃には涙を宥めることで精いっぱいだから、夜が更けていく中で迷子になる。自宅の自室の自分のベッドは迷路への入口であり天国からの出口。窓の向こうにはきっと冥界があって、私はまだ生きているからそれを空想して恐怖を跳ね除ける。




『茶色の詩』

秋を感じられるだとか感じられないだとか、そんな些細なことを言い合えるからこそ穏やかの意味を知る。定義ではなく、ただの感性・感情・その時々の気分に振り回される。もうすぐで、木枯らしが吹く。あの風に振り回される枯葉と私は、立場的にも物理的にも遠い場所にいるとは限らない。




『表紙裏の詩』

遠い昔に多くの偉い賢い人が頭を捻った末に漸く作り出されて世に出回り、曇天も雨天も関係なくただそこにあった、日に焼けることも無く日に当たることも無く湿度ばかりを含む、痛ましいほど綺麗な表紙の裏の、あまり目につかない見ようとされない場所から見上げる朝の空は、まだ暗い。




『輪廻の詩』

朝も夜も同じだ。一日が朝に始まり夜に終わっても、夜に始まり朝に終わっても。夜に全てを終えるか、朝が来るのをそっと待ち続けるか。それは個々の強さも弱さも鏡のように映すだろう。しかし終わりを選べないのもまた事実だ。それでも私は空を見上げ続ける。見上げる首が痛くなっても。




『アルバイトの詩』

同じ距離を同じような歩幅で同じくらいの速度で歩いて、出会ってはただの人間としか思ってない人達に似たイントネーションで決まった言葉を投げかける。そんなささやかな世界への反発に気づく人などそう居なくて、その度傷ついたり安心したりしてるんだ。いつだって、不安だから。

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