人魚の詩
『鷹の詩』
小鳥遊という言葉は小鳥が天敵の鷹がいないから遊ぶことが出来るという意味だと。鷹を除け者に遊ぶのは心苦しいけれど身の為だって。鷹はその分高く空を飛び多くのものを見るのだと。そんなささやかな祈りと願いを込めて私は名前を呼びたいのだ。そこには優しさがあるんだと思いたいから。
『眼鏡の詩』
同じものが見たいから同じ目薬を使う。それからお揃いの眼鏡をつけた。それでも足りないから一人分のコンタクトを二人で装着する。 まだ足りない。貴方と同じ義眼を作って目に装着した。それを可能にする為に目の手術後をした。それでも。何をしても、同じものを見ることは出来なかった。
『栄養ドリンクの詩』
土から養分を奪った根が吸い取った水分を消費するのは花弁を葉を育てる日照り。そんな植物を摂取しようと永遠の命が得られるわけでもなく、有限を潰して有限に散る。植物を殺めた人が植物に殺められることはないのに、人を殺めるのは人。人が殺めた結果、自滅することはあれど。
『端切れの詩』
さぁ。見かけたあの烏の話をしよう。継ぎ接ぎモチーフの、それでも黒いそのシルエットから何が生まれる。羽根が寿命を迎え抜け落ち、地面に落ちて雑菌が撒き散っても、烏は飛び続ける。明け方に逢瀬を駆け落ちを約束した恋人達の仲を摘んで、どこへ行くというのだ。明け烏よ、教えて。
『人魚の詩』
僕が魚であろうと人間であろうと人面魚であろうと貴女の態度は変わらないだろう。だから僕は物の怪としての姿を曝け出そうと決めたのだ。貴女は言った。命果てて泡になったなら遺骨を必死で探す旅に出るわ、文字の如く必死よ。と。僕の命は脆いが、土に還る人魚だっているかもしれない。
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