第2話

「ただいま」

「おかえり!おにいちゃん!」

と帰ってきた僕に全力で飛びついてくる。

てくてく、という擬音がここまで似合う中学生はいないのではないだろうか。

3つ下の妹のことははいわゆるブラコンというやつで僕のことを好きで好きでたまらないらしい。

言っとくが僕はちがうからな。

「ことは、お兄ちゃん今日は夕飯は大丈夫だから1人で食べててくれないか?ごめんな。」

「んーん。きにしないで!おべんきょうですか?」

「まぁ、そんなところかな。じゃあ部屋に行くから。」

と自分の部屋のある二階へと階段を登っていく。

「ある意味勉強だよな。」


今日あの論文を読んでいたのは最終確認のためだ。

ある実験---いや、ただの調理だと思いたい。

そう、僕は今からポップコーンを作るのだ。

ゆかりの言うように危険があるのは承知のこと。命が危なくなる可能性もある。だからゆかりにもことはにも言わずに1人で準備してきた。

「ふぅ。」

深く息を吸って、吐く。

緊張している。手から汗が止まらない。

大丈夫。準備に抜かりはない。

そう自分に言い聞かせた。

よし、と気合を入れてガスコンロに火をつけて鍋を熱し始める。

熱くなったのを確認して油ととうもろこしを投入する。

時間が経つにつれてとうもろこしに熱が伝わっていくのが目に見えてわかる。

そして、運命の瞬間がきた。


ガチャ、と扉の開く音がくる。

「おにいちゃん?何してるの?おいしそうなにおいがろうかまでかおってきてるよ?」

「ばかっ!来るな!」

そう叫んだ時だった。

ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!

と破裂音が続く。

「あれ?それってポップコーン?いいなぁ!わたしもたべる!」


とうもろこしを炒めてできたのはもちろんブラックホールではなくポップコーンそのものであった。

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