ポップコーン

@kota15

第1話

"ポップコーン"という食べ物を知っているだろうか。

普通はとうもろこしを炒めて作る白いお菓子を想像するだろう。僕も大好物で毎日のように食べていた。

しかし、それは昔のこと。

現代のポップコーンは、ちがう。

そもそも食べ物ではない。根本的にちがうのだ。


2063年ある研究者が、とある論文を発表する。

そこから、ポップコーンの常識が一変する。

「『ポップコーンの生産過程とブラックホール生成の関係性について』か。」

僕はポップコーンの常識が変化するきっかけとなった論文を手に取りつぶやく。

ポップコーンの生産過程はブラックホール発生の条件になり得る、ポップコーンは食べ物ではない、ブラックホールを生むための過程なのだと、ある研究者の論文発表会を食いつくように見入っていたのを覚えている。

「確かに爆発してできるっていうのは似ているけどな。やっぱり実感できないや」

「またその論文を見ているの?よく飽きないわね」

「・・・ゆかりか?」

私以外誰がいるのよ、と言う彼女は紫水ゆかり。一応僕の幼馴染だ。

「でも、本当にびっくりよね。ポップコーン作るとブラックホールができるなんて。」

「今でも信じられないよ。実験しようにも法律で禁止されちゃったからすることもできないし。でもばれなけれ」

「ダメよ。絶対。」

言い切る前に止められてしまった。僕の幼馴染は多少頭が固い。そのせいで見た目はいいのだが周りから疎まれている。

・・・黙っていれば美人なのになぁ。

腰まで伸びた黒髪や整った顔立ちやスタイルはもちろんだが、切れ長で大きな目でさえ威圧感ではなく気品さと捉えることのできる美しさがある。

「何?なんか私の顔についているの?」

「なんでもないよ。それよりさ、ポップコーンやっぱり作ってみないか?内緒でさ。」

「さっきも言ったけど、ダメ。法律で禁止されているのもあるけど、危険すぎる。ブラックホールがもし発生して巻き込まれたら私たちという存在がこの宇宙からなくなってしまうのよ?」

うん、やっぱり美人だ。そんなことを思いながら会話を続ける。


「でもさ、ブラックホールって高度に圧縮するものだろ?もしかしたら質量が圧縮された状態でどこかに出れるかもしれないだろ?そう考えたらワクワクしない?」

「わくわくしない。はい、この話は終わり。もう時間も遅いし帰りましょ。」

と自分の荷物をまとめ始める。

「・・・ポップコーン食べたいな。」

最後に食べたのはいつだろうか。もう遠い昔のような気がする。

いつか、絶対。

またポップコーンを食べてやると心に誓って僕は帰路に着いた。

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