第44話 例の件を聞きました
大変大変大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。(土下寝)
こんなに更新ストップしていたのに、沢山の方が待っていて下さっており、本当に嬉しく思います。ありがとうございます。
これからも更新は遅くなってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします!
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後日、私はジルフォード殿下に呼び出され、王族専用の寮に来ました。私の部屋も十分すぎるほど広いですが、殿下ともなると1つの屋敷です。
「リズ、体調は大丈夫?」
挨拶をしてソファーに腰を下ろした私に、声を掛けた殿下の顔色は非常に悪いです。
「わたくしは何ともありません。お気遣いありがとうございます……それよりも、殿下は「私は大丈夫だから、心配しないで」」
「……はい」
いや、嘘ですよね。隠そうとしていても、その笑顔には疲労が滲み出ていますし、目の下には隈が出来ています。でも、ここで私が無理矢理休めと言っても恐らく「大丈夫」の一点張りでしょうから……。
「今日は、報告をしようと思って呼んだんだ」
膝に肘をつき、こちらに前屈みになった殿下は、笑顔を引っ込めて神妙な表情になります。私は背筋を伸ばし、しんと静まった部屋の中殿下の言葉を待ちます。
「……この間、リズのシャンパンの中に混入していたのは、痺れ薬だ。死ぬような毒薬では無いが、あのまま飲み込んでしまえば微量でも3日は全身が痺れる」
サーっと血の気が引き、唇を噛み締めました。今まで、そんな物騒な事からは無縁だった私にとって、死に至らない毒でも怖いものは怖い。
「恐らく、狙いは私と――クリストファーの命だろうね」
………え?
「私とクリストファーのには、致死量の遅効性の毒が入っていた」
「………どういう事ですか」
それを聞いてしまったら聞かずには居られません。
「その毒を、殿下は、飲んだのですか」
声が震えてしまいます。
その毒が殿下の身を蝕んでいたのなら、今、具合が悪そうなのはそのせいでは無いかと。いいえ、その可能性が圧倒的だから、です。
ジルフォード殿下はその青い顔でも尚美しい笑顔を浮かべ、「大丈夫」と頑なに言います。
「毒はね、慣れているんだ。王族は幼い頃に毒を故意に投与されて耐性を作るんだよ。まぁ、今回は異国の、しかも遠い所の劇薬だったから割と苦しんだけど、今まで色んなバリエーションの毒を入れて来たから、他の人よりはマシだな」
その言葉にも納得出来ません。
「………服毒した事ないものだと、分かっていらっしゃったのですか」
「まあね。匂いと色、舌触りとか味とかで大体の毒は分かるけど、今回は分からなかったからね」
あっけらかんと言う殿下に、だんだん苛ついてきました。
「遅効性だとお聞きました。お身体は大丈夫なのですか」
「大丈夫。心配しなくても。山は越えたから死にはしないよ」
死にはしないと聞いて少しほっとしました。でも何故、毒薬入りだと分かっていたのに口にしたのか。難しい顔をして黙りこくる私を見て、ジルフォード殿下は優しげに目を細めました。
「意味が分からないって顔をしてるね。毒を飲んだのは、私が第1王子で時期に王太子になる人間だからだ」
私ははっとして殿下の目を見つめました。その蒼い瞳には熱い決意が込められており、1度合わせてしまえば反らせません。息が止まるほどの覇気から王族の血をひしひしと感じます。
「受け取ったドリンクを落とすとかして、噂にさせることは勿論可能だった。犯人を表立って炙り出すことも。だが、私が今、やるべき事はそうでは無い。立太子間近の王子のドリンクに、レヴィロ公爵家の嫡男のに、魔術師の家の直系で、私と1番距離が近いというウェリス侯爵家のご令嬢のに、毒が入っていたんだ。それを公にして何の得がある?好奇の視線に晒されて、ありもない噂を立てられ、被害被るのはこちらの方だ」
確かにその通りです。私は殿下に頭を下げました。
「大きな口を聞きました……大変申し訳ございません……」
「いや、リズを攻めたい訳ではないんだ。本当に。だけどね」
そこで区切った殿下は、酷く傷ついたような表情で私を見てきますが……。
「……いや、やめておく」
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