第43話 殿下は大丈夫なんですか?!



 ……はっ!待て待て、よく考えるんだ落ち着けジゼル。

 まずこんな話を結界も張らずにするなんてなんという失態でしょうか。

 すぐ魔力を展開させようとして、よく見れば殿下の魔力が辺りを覆っているのが分かりました。既に張っておいて下さったのですね。魔力の綻びも一切ない綺麗な張り方で、密かに感嘆しました。


 いや、魔力の練り方に感心している場合ではありません。そういえば殿下は私が口を付ける前に飲んでいらっしゃいました。しかも、それを飲んでしまった。




「殿下!殿下は飲んでいらっしゃいましたよね?!お加減は?!」




 私は焦って殿下の両腕を掴みガタガタと揺らします。所詮私の力では殿下は全く動きませんけれど。

 すると殿下は私の言葉を聞いて「あー………そういえば………」と、心底どうでも良さそうにそっぽを向いて言いました。駄目でしょう殿下!貴方はこの国の第一王子なんですよ!




「毒は、入っていたのですか?!」


「まあね」


「っ?!それならばっ………!」




 殿下は私の手をそっと離すと、何食わぬ顔で誤魔化しやがりました。………こほん、誤魔化しました。そしてそのまま自然にエスコートされ夜会の会場に戻ると、出入口の正面の扉の傍に、兄様とクリス様がいるのが目に留まります。……正確にはご令嬢の塊が。


「いやー、なんか凄いいるー」と思って原因を探れば、必ず最高物件が絡んでいますからね。壁際に居るだけで2人はどうしてそんな事になるのか、些か不思議でなりません。おっと、兄様と目が合いました。助けてくれと死んでいる目が訴えています。


 殿下は王子様然としながら2人に近づきます。

 するとそれに気が付いたご令嬢方がさっと道を譲り、花道があっという間に出来上がりました。




「待たせたね、レヴィロ公、フィリップ」


「殿下、僕の大事な妹がお世話になったようで。そろそろ僕達は引き上げようかと」




 阿吽の呼吸で殿下から離れて兄様の元へと戻ります。殿下はいつものきらきらスマイルを貼り付けました。




「そうか」


「はい、ありがとうございました」




 礼をして、国王陛下のいらっしゃる王座に兄様と向かい、何事も無く侯爵邸へ帰りました。


 いつもより殿下があっさりしていたなぁと、何故か不思議に思いましたが、そんな時もあるか、と流してしまいました。それよりも、デビュタントの夜会にしては濃すぎて………疲れが………ぐぅ……。















*******



最近更新できておらず申し訳ありません。

更新について近況ノートに載せましたので、詳しくはそちらをご覧いただければと思います。

必ず復活致しますので!


宜しくお願いします!


柊月


2019.8.22

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る